情報中毒者、あるいは活字中毒者、もしくは物語中毒者の弁明

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漫画、あるいは小説、もしくはエッセイなどの
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2024年のコミック市場は7,000億円の大台に。電子の伸びが紙の減少を補って史上最高額をさらに更新。紙雑誌は危機的状況。単行本は増加、雑誌数減。

 


 2024年、コミック市場全体は総計7,043億円。前年よりも167億円増で、史上最高額をさらに更新、7,000億円をついに超えました。
 紙の雑誌は9.7%減、紙のコミックスが8.6%減、電子が6.0%増。

 


 そして、出版全体に占めるコミックの割合は、44.8%とさらに増えています
 海外でも売れているのを考えると、全体規模はいかほどになるのか。

 ということで、出版指標2024年春号、特集「コミック市場2024」に掲載されたデータなどより。
 (「出版指標」は季刊で年4回刊です。)


2024年の簡単なまとめ


  • コミック市場全体の販売額は伸び、史上最高額をさらに更新
    • 電子が増え続けている
  • 電子の販売金額が5,122億。紙が1,921億なので、約2.66倍
    • 紙だけでみれば、1979年頃と同じ規模まで縮退
  • 紙雑誌・コミックスは引き続き減
    • 雑誌はコンビニ扱い減で、2025にはさらに減る見込み
    • コミックスも紙は減少。
  • 単行本新刊点数は15,081点で、最高をさらに更新
    • 電子のみの単行本、というのもあるので実数はもっと多いか?
  • 紙の漫画雑誌の売り上げは続減
    • 銘柄数はさらに減って167誌。(最大時は328誌なので半減ですね)



2024年販売金額(億)販売部数(万冊)
雑誌(紙)44910,600
単行本(紙)1,47222,580
電子(雑誌+単行本)5,122-
総計7,043-




 以下、データは出版指標2024年春号や、過去分からの引用になります。


 販売金額は、
 紙は雑誌・単行本計で8.8%の減。単行本が8.6%減、雑誌が9.7減。
 電子は6.0%の増。
 全体で1.5%の増。


  


 紙の雑誌は全体で449億円、1億600万冊。2025年には1億冊割りそう。


 紙の雑誌の銘柄数は10誌減って続減、単行本点数は増(月換算で26冊増えてる)。
 



近年の傾向と電子コミック



 紙での販売部数・販売金額は、雑誌減、単行本も減。
 雑誌は、2025年になってコンビニ取り扱いが減ったので、さらに減ることが予想されます。


 電子はまだまだ伸びて、ついに5,000億円を突破。
 2004年、まだ電子が計算に入って無かった頃の総額を超えています。


 紙の雑誌は、29年連続のマイナス。ピークからだと87%減ですね。
 2025年春には、雑誌の取り扱いをするコンビニが1万店以上減ったので、今後どこまで減るか(持つか)というフェーズに。



 


販売部数雑誌計(万冊)前年比単行本計(万冊)前年比
201629,90085.6▼37,02192.0▼
201726,59888.96▼31,60885.38▼
201823,51188.39▼28,92391.51▼
201919,93684.79▼29,960103.59△
202017,22986.4▼38,151127.3△
202114,87886.4▼37,08597.2▼
202213,93793.7▼29,46979.5▼
202312,13787.1▼25,55686.7▼
202410,60087.3▼22,58088.4▼


 単行本の販売部数は、2,976万部減って、販売金額は138億円減。
 そもそも書店が減ってて、電子に乗り換えるのもあって、この流れは止まらないか。

 紙の単行本の新刊点数は、雑誌扱い減、書籍扱いは増。
 紙の雑誌を持ってない出版社やレーベルの単行本がってのもあるのか?


 

販売金額紙雑誌計(億)前年比紙単行本計(億)前年比
20161,01687.1▼1,94792.6▼
201791790.26▼1,66685.57▼
201882489.86▼1,58895.32▼
201972287.62▼1,665104.85△
202062786.8▼2,079124.9△
202155889.0▼2,087100.4△
202253796.2▼1,75484.0▼
202349792.6▼1,61091.8▼
202444990.3▼1,47291.4▼


 電子コミック市場の伸びは1桁、っても292億円の上昇。
 約300億円、ライフネット生命の年商分くらい上がってる。
 


電子コミック(単行本+雑誌)販売金額(億)前年比
20161,491127.54△
20171,747117.17△
20182,002114.59△
20192,593129.5△
20203,420131.9△
20214,114120.3△
20224,479108.9△
20234,830107.8△
20245,122106.0△


 近年の、全体に占める紙と電子の比率を見やすくするとこうなります。紙はやっぱり厳しいなあ……。

 


 


コミック文庫とコンビニコミック



 文庫は激減、そもそも新刊がほとんど刊行されない。「Dr.スランプ」「あさきゆめみし」が増刷されはしたが、特殊例。
 スマホで読めるなら文庫のメリットってほぼ無いですからねえ。
 コンビニコミックも減り続けている。雑誌と同じく、こちらも書籍扱わなくなるコンビニ増加の影響が2025年には出るのだがどうなるか。致命的っぽい気がするが。
 


雑誌銘柄数と、単行本の点数


 


 紙の雑誌は、167誌。ピーク時の半分くらいになってしまった。


 漫画配信サイトは、まだまだ増えてて、全体像を把握出来てる人も居ないんじゃないかってレベル。
 過去にやってなかった出版社や、他業種からってのもあり、サイトもアプリも混沌。
 新作だけでは無く過去作品もリバイバル連載されてたり、とにかく量が多い。
 毎日の無料更新だけでも読み切れないであろう量になってます。



 


 単行本の年間新刊点数は、昨年から320点増の15,081点。増え続けてます。
 月1,250点強で、1日あたり40点*1以上。漫画に強い書店やアニメイトなんかでも、この内どれだけを店頭に並べる事が出来てるのか。
 コンビニにあふれるほど並ぶのもあれば、そもそも初版が絞られてて1冊も入荷しない、なんて作品もかなりありそうだし、格差がね。




 単行本が増えてるという事は、描かれてる商業漫画の量も増えてるという事で、漫画家さんの数も増えてるということ。
 兼業作家さんも増えてそうだけど、漫画を描いて金を貰ってる「プロ」は今何人位居るんだろう。





 紙の単行本は、メジャータイトル以外は店頭に並ばないか、並んでも少数。初版が予想より売れたりした時には小ロット増刷を繰り返して、それを誇るような宣伝までしてしまうという、なんか本末転倒な場合もあったり。
 アニメ化やドラマ化があると一気に売れるのもあるけど、各種漫画賞的なのでも効果があるかどうかの差が出てるとの事。

 ネットでのバズから売れた作品としては、Xでの「ドカ食いダイスキ!もちづきさん」、TikTokから「キミに恋する三姉妹」「恋せよまやかし天使ども」「となりの猫と恋しらず」、広告がらみから「踏んだり、蹴ったり、愛したり」「ハネチンとブッキーのお子様診療録」「あなたのお城の小人さん」など


 賞とってから、作者の過去作品まで売れたのが、ミユキ蜜蜂「春の嵐とモンスター」。電子はそういう時に強いんだよね。


 そしてやっぱり「ちいかわ」は売れまくり。関連書籍、グッズ、コラボ、はてはテーマパークまでなど多岐に展開して、どんだけになってんだっていうね。
 ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ(1) (モーニングコミックス)



 コミックスの値上がは止まらず。紙やインク、流通費は電子版には関係無いはずなんだけど、電子に反映されるのはなんなんだろうね。
 平均価格で言えば、2012年が504円で、2022年は595円、2023年は606円、2024年は651円。これはもうどうしようもない。




 特装版とか付録付きも色々出てますが、転売の標的になったりもあり、しかし作りすぎると大赤字というのが難しい所ですね。
 エヴァンゲリオン7巻のフィギュア付き、今でも残ってるリアル書店あったりしない?








雑誌銘柄数前年比単行本新刊点数前年比
201623197.5▼12591100.2△
201722597.4▼1246198.97▼
201820591.1▼129771104.1△
201919997.07▼1280598.67▼
202019296.5▼12,939101.0△/TD>
202119199.5▼13,420103.7△
202218596.9▼14,187105.7△
202317795.7▼14,761104.0△
202416794.4▼15,081102.2△


 出版社が自社レーベルを配信するWEB漫画サイトも増加、というか強化傾向にあり、アプリだけでなくWEB(ブラウザ)で読む、というのが多くなっている。
 読切が単発でバズったり、SNS経由で連載作が掘り起こされたりというのも。



 

 紙の雑誌種別ごとの数。

種類20142015201620172018201920202021202220232024
少年向け2728282828282829292927
少女向け3533333229282828282725
青年5350474644424039393735
レディスコミック5347474542444544424036
4コマ202020191514131310109
パチンコ・パチスロ109875544322
BL1616161615131313131313
趣味・スポーツ・その他77554433333
成年3127272723211818181717
合計252237231225205199192191185177167


 紙の雑誌全体は部数も銘柄数も減。復刊や新創刊も無いのだが、WEBでかつての名前が復活する例があったり(Gakkenのノーラなど)。
 10誌減った内、5誌はぶんか社の雑誌。


 定価も上げ傾向にあり、それだけでなく「特別定価」が適用される号も多くなっているかな。
 そういうのもあって、電子・アプリの定期購読のお得さを知ってしまうともう紙には戻れない、という人も多かろう。
 講談社のDAYSなんか、紙のヤンマガ2冊分で1か月の全漫画誌読めるしねえ。




 雑誌としては単発で売れる号があったが、全体としては苦戦。
 堅調、好調としてるのは「週刊少年ジャンプ」「ヤングガンガン」「少年GANGAN」など。やはり付録か。
 「モーニング」はちいかわ表紙号が売れ行き伸びたとのこと。



 コンビニでの販売減がどれだけ響くのかは来年になってみないとわからないが、厳しいのは確かだろう。
 紙雑誌に掲載される作品は、その出版社・編集部的にも厳選された作品の筈で、そのアドバンテージは無くならないのか、それとも。
 でもなあ。ジャンプラ掲載作品の上位とか見るとなあ。


電子の動き


 


 昨年から約292億円の伸びで、5,000億円突破。
 元が大きいので、1桁成長でも額は凄い事に。


 紙で売れてる作品、映像化作品などが強いのは変わらず。
 縦スクロールは伸びが鈍化。





 割引セール、クーポン配布、ポイント還元などは常にどこかで何かをやっていると言っていい状況。
 くくりかたも、出版社だったり雑誌だったりジャンル特集だったり、色々。
 作者さんが「セールやってるの知らなかった」みたいに呟いてるのとか、どうなってんだよって話もあったり。



 海外展開も多くの出版社が仕掛けていて、韓国で「静かなるドン」の縦スク版が出たりもしてる。
 クレジットカード決済問題が影響したりも。


 電子でも、紙で売れてる「キングダム」「呪術廻戦」「フリーレン」「ダンジョン飯」なんかは当然強いが、アプリごとの先行配信作品などでヒットも。




人気作品




 2024年のトップ作品は「呪術廻戦」。完結効果もあっただろうが、強い。


 少年・男性向けだと「呪術廻戦」「ONE PIECE」「ヒロアカ」「推しの子」「キングダム」といった集英社勢に加え「ブルーロック」「フリーレン」「薬屋のひとりごと」「WIND BREAKER」「転生したらスライムだった件」「コナン」「入間くん」など
 男性向けの上位20作の内12作*2集英社(ジャンプ、ジャンプ+、ヤングジャンプ)ってのは強すぎるなあ。


 女性向けでは「地縛少年花子くん」が筆頭で、「光が死んだ夏」「春の嵐とモンスター」「ミステリと言う勿れ」「山田君とLv999の恋をする」「ハニーレモンソーダ」「君と宇宙を歩くために」など。
 こちらは、スクエニKADOKAWA集英社講談社小学館白泉社など多彩。スターツ出版祥伝社の名前も。




 電子連載作含めここまでに出てないのだと 「おひとり様には慣れましたので。婚約者放置中!」「拝啓見知らぬ旦那様、離婚していただきます」「オークの樹の下」「しょせん他人事ですから」「いきなり婚」などなど。





おわりに



 紙市場の縮小を電子がぶち抜く事で、全体では7,000億円越えまで拡大したコミック市場。
 単行本の数も史上最高で、とても一人の人間が読み切れる、把握できる数を超えています。
 そして、売れる作品とそうでもない作品の格差が大きくなってるというのも加速しつつある模様。


 リアル書店は年々減少しつつあり、今年一部コンビニへの雑誌配本が無くなった事で、紙の販売チャネルが減少しています。(時々スーパーマーケットで雑誌売ってる店もあるけど、あれどうなの?)
 一部のヒット作以外は初版部数も少なく、増刷も少部数を繰り返す形式になってたり、本当に欲しい人の手元に行ってるのか?という状態。
 中には、実写ドラマ化されてるのに紙での増刷が無かったって例もあったり。本当にどうなってるんだ。


 とはいえ、電子の、品切れが無く、何処からでも何時でも買えて、しかも場所をとらない、というのが強すぎるんですよねえ。
 巻数多い作品だと特に。


 読者からすれば、新しい作品や漫画家とをどう見つけるかってのが多角化してるとも言えるのか?
 数巻無料公開とか、まず触れてもらうってのはどこも仕掛けてるんですよね。新作も旧作も。


 新人読切とか、紙の時代だと公開できなかったものがWEBだとどんどん載せられるってのも強いんですよね。
 旧作だと、講談社のマガポケを例にすると「釣りキチ三平」「1、2、の三四郎」などのリバイバル連載をやってて、そこから有料話にポイント使っちゃう人すごく多そう。


 そういった出版社主体のと、ピッコマとかコミックシーモアのようなアプリと、読者からすると何でどれをって選択肢は滅茶苦茶増えてる。
 前にも書いたけど、作品を読んでても、それがどの出版社か、どころか漫画家の名前すら知らないままに読んでるって場合もありそう。



 漫画に流れる金額は増えている。時間と金を使ってる人も増えている?
 それが一部のヒット作に集中してる、という状態が変わることはあるのか。
 過去最多であろう玉石混淆の中から、自分にとっての「玉」をどう見つけ出すのかというのは読者側の課題でもあるのですよね。


 漫画の未来は、いったいどっちだ。




 といった所で今回はここまで。




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