2018年、紙の漫画雑誌とコミックスの売り上げは下がり・減り続けました。
が、漫画市場全体で見ると2017年より微増。コミックスが、電子で売れているんですね。
全体としては、ピーク時の1996年の60%程度。
当時はとにかく雑誌が売れていたって事を考えると、適正値と言うか落ち着きどころがどの辺かってわかりませんなあ。
直近分。
雑誌と単行本の売り上げはどんどん離れていきますね。
ということで、出版月報2018年2月号、特集「紙&電子コミック市場2018」に掲載されたデータなどより。
2020年あたりには売上順的に「電子&紙」になるかなあ。
2018年の簡単なまとめ
- コミック市場全体の販売額を見ると、前年より微増
- 紙の落ち込みは大きいが、単行本の値上げや電子の増加でどうにかしのいだ
- 単行本は電子が紙を超え、差を広げてる
- 電子+紙の単行本の合計販売額は、2016年よりは低いが、2017年よりは上
- 紙の漫画雑誌は、まだまだ下がり続けてる。前年比12.6%減。二桁減が続く
- 電子版漫画雑誌は、昨年より1億円伸びたことになってるが、全然少ない
- 雑誌銘柄数は激減
- しかし、年間の単行本点数は増え、過去最高
2018年販売金額(億) | 販売部数(万冊) | |
---|---|---|
雑誌(紙) | 824 | 23,511 |
雑誌(電子) | 37 | - |
単行本(紙) | 1,588 | 28,923 |
単行本(電子) | 1,965 | - |
以下、データは出版月報からの引用になります。
全体の販売金額は、紙は雑誌・単行本で6.6%減。
しかし、電子は14.6%の増。
雑誌は全体で861億円。単行本の1/4しか売れていないって事ですね。
ここ数年の傾向と電子コミック
紙での販売部数、販売金額は、雑誌激減、単行本も減。
紙の雑誌は昨年比で10%以上落ち込んで、23年連続のマイナス。
販売部数 | 雑誌計(万冊) | 前年比 | 単行本計(万冊) | 前年比 |
2012 | 48,303 | 93.6▼ | 43,584 | 96.4▼ |
2013 | 44,075 | 91.2▼ | 43,856 | 100.6△ |
2014 | 39,755 | 90.2▼ | 44,038 | 100.4△ |
2015> | 34,788 | 87.5▼ | 40,250 | 91.4▼ |
2016 | 29,900 | 85.6▼ | 37,021 | 92.0▼ |
2017 | 26,598 | 88.96▼ | 31,608 | 85.38▼ |
2018 | 23,511 | 88.39▼ | 28,923 | 91.51▼ |
販売金額では、
販売金額 | 紙雑誌計(億) | 前年比 | 紙単行本計(億) | 前年比 |
2011 | 1,650 | 92.9▼ | 2,253 | 97.3▼ |
2012 | 1,564 | 94.8▼ | 2,202 | 97.7▼ |
2013 | 1,438 | 91.9▼ | 2,231 | 101.3△ |
2014 | 1,313 | 91.3▼ | 2,256 | 101.1△ |
2015 | 1,166 | 88.8▼ | 2,102 | 93.2▼ |
2016 | 1,016 | 87.1▼ | 1,947 | 92.6▼ |
2017 | 917 | 90.26▼ | 1,666 | 85.57▼ |
2018 | 824 | 89.86▼ | 1,588 | 95.32▼ |
コミックスは販売部数が下がってますが、定価の値上げ(少年誌のは440円程度に、青年誌のは630円程度まで)などで金額の下降は抑えられた形になります。
電子コミック市場はさらに伸びたものの、伸び幅は少し下がりました。
新刊も電子で買うというのが定着しつつあるのかもしれません。
雑誌は電子乗り換えが進まない。
2018年でも37億円と、1年で1億円しか増えていない。雑誌ではなく単話、作品単位で読むのが多いという事か。
それとも、無料連載を電子で読む程度なのか。
しかし、電子雑誌をAmazonなどで単巻売りしてるの、ちゃんと数に入ってるんだろうか?
単行本と同じ扱いになってるのではないかという疑惑も。
電子コミック | 電子雑誌計(億) | 前年比 | 電子単行本計(億) | 前年比 | |
2005 | - | - | 34 | - | |
2006 | - | - | 106 | 311.76△ | |
2007 | - | - | 229 | 216.04△ | |
2008 | - | - | 330 | 144.1△ | |
2009 | - | - | 428 | 129.7△ | |
2010 | - | - | 496 | 115.89△ | |
2011 | - | - | 492 | 99.19△ | |
2013 | - | - | 731 | 127.35△ | |
2014 | - | - | 882 | 120.66△ | |
2015 | - | - | 1149 | 130.27△ | |
2016 | 31 | - | 1460 | 127.07△ | |
2017 | 36 | 116.12△ | 1711 | 117.19△ | |
2018 | 37 | 102.77△ | 1,965 | 114.84△ |
コミック文庫は3.7%減、懐かし作品なども電子で買えるので、文庫の収納性にメリットが減ったためか。
コンビニコミックは6.8%減。こちらも、再刊需要は電子に移行している事からか。
雑誌銘柄数と、単行本の点数
漫画雑誌の数は減り続け、1990年ごろと同水準に。2018年は23誌が休刊。来年には200誌を割り込みそう。
ただし、電子雑誌やサイトが増えている為、単行本の基となる漫画連載の量は増えている事になるだろう。
単行本の年間新刊点数は500点以上増え、過去最高を更新。
連載がなかなか単行本化されない、という話をよく目にするわりに、単行本点数が増えてるのはなぜか。
なろう系コミカライズなど含め、WEB連載された作品の分単行本が増加してるというのが背景にあると考えられる。
月1000冊超えているのは変わらないが、電子のみで発売されるものを含めると実際の点数はさらに増えているかもしれない。
雑誌銘柄数 | 前年比 | 単行本新刊点数 | 前年比 | |
2010 | 288 | 96.0▼ | 11977 | 100.4△ |
2011 | 295 | 102.4△ | 12021 | 100.4△ |
2012 | 288 | 97.6▼ | 12356 | 102.8△ |
2013 | 276 | 95.8▼ | 12161 | 98.4▼ |
2014 | 252 | 91.3▼ | 12700 | 104.4△ |
2015 | 237 | 94.1▼ | 12562 | 98.91▼ |
2016 | 231 | 97.5▼ | 12591 | 100.2△ |
2017 | 225 | 97.4▼ | 12461 | 98.97▼ |
2018 | 205 | 91.1▼ | 129771 | 104.1△ |
雑誌種別を問わず、どんどん減ってます。電子に移行する場合もありますので、純減ではないのですが。
2019年に入ってからの休刊もあるだろうしなあ。
種類 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 |
---|---|---|---|---|---|---|
少年向け | 30 | 27 | 28 | 28 | 28 | 28 |
少女向け | 34 | 35 | 33 | 33 | 32 | 29 |
青年 | 57 | 53 | 50 | 47 | 46 | 44 |
レディスコミック | 59 | 53 | 47 | 47 | 45 | 42 |
4コマ | 22 | 20 | 20 | 20 | 19 | 15 |
パチンコ・パチスロ | 13 | 10 | 9 | 8 | 7 | 5 |
BL | 16 | 16 | 16 | 16 | 16 | 15 |
趣味・スポーツ・その他 | 9 | 7 | 7 | 5 | 5 | 4 |
成年 | 36 | 31 | 27 | 27 | 27 | 23 |
合計 | 276 | 252 | 237 | 231 | 225 | 205 |
電子の動き
「漫画村」の閉鎖後、電子書籍の売り上げが各ストアで伸びたとのこと。
ポイントなどで1話ごとに売る手法や、複数雑誌の定額読み放題、など様々な手法が模索されている。
また、早く読むのは有料、待てば無料になるというモデルも登場。
男性向けは紙でも売れているもの、女性向けはBLやTLが人気。
異世界もの(なろう系)ブームは電子で顕著。
人気作品
メガヒット作品は当然売れてる。
ONEPIECE,進撃の巨人は部数は多いが初版部数減少。電子乗り換え?
、,
名探偵コナン 安室人気で長編作品ながら重版。
、
転生したらスライムだった件、ゴブリンスレイヤーなど、なろう系コミカライズのヒット作。
、
少女、女性向けでは
思い、思われ、ふり、ふられ、七つ屋 志のぶの宝石匣など
、
さくらももこの訃報で、ちびまる子ちゃん新刊発売。既刊からすべて売れた。良くも悪くも。
映像化作品はやはり売れる。
春待つ僕ら、ちはやふる、深夜のダメ図鑑、アシガール。
「初めて恋をした日に読む話」は年間通して売れた
、、、、
スピンオフ作品にもヒット多数
ゼロの日常以外にも、続編系、別作家によるスピンオフなど。
続編系:カードキャプターさくら、金田一37、MFゴースト、るろうに剣心、ママレード・ボーイ、Magor 2ndなど。
、、、、、
久々に新刊が出た作品も売れた。
よつばと!、ブラックラグーン
、
ファンタジー食い物も色々。ジャンルとして定着か。
異世界居酒屋のぶ、ダンジョン飯、衛宮さんちの今日のごはん
、、
衛宮さんちは異世界ではないけれども。
SNSでの拡散や、賞から知られてのヒット作
BEASTARS、おじさまと猫、極主夫道、男子高校生を養いたいお姉さんなど。
、、、
バナーや電子からのヒットというのも出てる。
この愛は、異端。、駆除人、凪のお暇など
ちなみに、上記作品の中で唯一電子版が存在しないのが「よつばと!」ですね。
おわりに
紙の雑誌の銘柄数がどんどん減っています。
今年夏のコンビニ浄化運動で、成年誌とかはさらに減るんじゃあないのかな。
単行本は増えています。
という事は、1点当たりの売り上げはまだまだ下がる、という事か?
単行本は電子に移行が進んでますが、雑誌はそうなってないように見える。
連載は無料のWEBで、単行本で儲ける、というスタイルになってると考えればいいのか、それとも。
電子雑誌だと更新が不定だったり、紙よりも連載が安定しないっぽいのがどうもなあ、というのもあるけど、それも過渡期なんだろうか。
漫画の未来は、いったいどっちだ。
といった所で今回はここまで。
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- 2014年、漫画雑誌の販売部数はピークの三分の一まで減少。しかし、単行本は電子を合わせれば過去最高の販売金額に。
- 2013年のコミック市場、単行本は「進撃の巨人」2045万部効果で微増も、紙の雑誌は大幅続落。電子が伸びるも補いきれず。
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