2017年、漫画雑誌の売り上げはついに1000億円を割ってしまいました。電子雑誌を合わせても、です。
コミック市場全体で見ると、ピーク時の1996年の57%にまで縮小しています。
単行本ではついに電子が紙を上回り、本格的に電子時代に入ったと言えるでしょう。
しかし、紙の雑誌の売り上げ減少を、電子雑誌がまったくまかないきれていない。
ということで、出版月報2018年2月号、特集「紙&電子コミック市場2017」に掲載されたデータなどより。
そのうち「電子&紙」の順になりそうだな。
2017年の簡単なまとめ
- コミック市場全体の販売額を見ると、前年より減
- 電子が伸びても、紙の落ち込みが大きすぎて補いきれない
- 単行本は電子が紙を超えた
- 電子+紙の単行本の合計販売額は、2016年より下がった
- 紙の漫画雑誌は、まだまだ下がり続けてる。前年比12.8%減。二桁。
- 電子版漫画雑誌は、まだまだ売れていない。少なすぎる。
- 単行本点数はそれほど変動せず、雑誌銘柄数は減っている
2017年販売金額(億) | 販売部数(万冊) | |
---|---|---|
雑誌(紙) | 917 | 26,598 |
雑誌(電子) | 36 | - |
単行本(紙) | 1,666 | 31,608 |
単行本(電子) | 1,711 | - |
以下、データは出版月報からの引用になります。
全体の販売金額は、紙は雑誌・単行本で%減。
しかし、電子は17.2%の増。
紙の減少を電子が補いきれず、特に雑誌は1000億円を割り込んでしまいました。
ここ5年の傾向と電子コミック
紙での販売部数、販売金額は、雑誌激減、単行本も減。
紙の雑誌は昨年比で10%以上落ち込んで、22年連続のマイナス。
平均定価は微妙に上昇傾向との事。
販売部数 | 雑誌計(万冊) | 前年比 | 単行本計(万冊) | 前年比 |
2012 | 48,303 | 93.6▼ | 43,584 | 96.4▼ |
2013 | 44,075 | 91.2▼ | 43,856 | 100.6△ |
2014 | 39,755 | 90.2▼ | 44,038 | 100.4△ |
2015 | 34,788 | 87.5▼ | 40,250 | 91.4▼ |
2016 | 29,900 | 85.6▼ | 37,021 | 92.0▼ |
2017 | 26,598 | 88.96▼ | 31,608 | 85.38▼ |
販売金額では、
販売金額 | 紙雑誌計(億) | 前年比 | 紙単行本計(億) | 前年比 |
2011 | 1,650 | 92.9▼ | 2,253 | 97.3▼ |
2012 | 1,564 | 94.8▼ | 2,202 | 97.7▼ |
2013 | 1,438 | 91.9▼ | 2,231 | 101.3△ |
2014 | 1,313 | 91.3▼ | 2,256 | 101.1△ |
2015 | 1,166 | 88.8▼ | 2,102 | 93.2▼ |
2016 | 1,016 | 87.1▼ | 1,947 | 92.6▼ |
2017 | 917 | 90.26▼ | 1,666 | 85.57▼ |
電子コミック市場はさらに伸びたものの、伸び幅は少し下がりました。
新刊の移行は進んだが、旧作まとめ買いがそろそろ止まりつつある?
雑誌は電子乗り換えが進まない。
2017年でも36億円と、紙の雑誌の減少金額に全然追いついていない。
グラフでもほとんど見えない位ですね。
しかし、電子雑誌をAmazonなどで単巻売りしてるの、ちゃんと数に入ってるんだろうか?
単行本と同じ扱いになってるのではないかという疑惑も。
電子コミック(単行本) | 販売金額(億) | 前年比 |
2005 | 34 | - |
2006 | 106 | 311.76△ |
2007 | 229 | 216.04△ |
2008 | 330 | 144.1△ |
2009 | 428 | 129.7△ |
2010 | 496 | 115.89△ |
2011 | 492 | 99.19△ |
2013 | 731 | 127.35△ |
2014 | 882 | 120.66△ |
2015 | 1,149 | 130.27△ |
2016 | 1,460 | 127.07△ |
2017 | 1,711 | 117.19△ |
コミック文庫は1.9%増、これは久々の事で、STEEL BALL RUN@荒木飛呂彦の貢献が大きい。
コンビニコミックは16%減。暇つぶし需要、再刊需要が電子に移行している事からか。
雑誌銘柄数と、単行本の点数
紙の漫画雑誌の数はますます減っている。
電子雑誌、アプリなどなど、新作発表の場は増えてるので、商業漫画の量は増えてるのかもなんですが……。
雑誌種別を見ると、まんべんなく減ってる、というか。
2018年に入ってからの休刊も考えるとまたさらに。
単行本の年間新刊点数は微減ではあるがほぼ横ばい。
月1000冊超えているのは変わらないが、電子のみで発売されるものを含めると実際の点数は増えているかもしれない。
単行本化されないものが増えている、のかも。
雑誌銘柄数 | 前年比 | 単行本新刊点数 | 前年比 | |
2010 | 288 | 96.0▼ | 11977 | 100.4△ |
2011 | 295 | 102.4△ | 12021 | 100.4△ |
2012 | 288 | 97.6▼ | 12356 | 102.8△ |
2013 | 276 | 95.8▼ | 12161 | 98.4▼ |
2014 | 252 | 91.3▼ | 12700 | 104.4△ |
2015 | 237 | 94.1▼ | 12562 | 98.91▼ |
2016 | 231 | 97.5▼ | 12591 | 100.2△ |
2017 | 225 | 97.4▼ | 12461 | 98.97▼ |
種類 | 2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 |
少年向け | 31 | 30 | 27 | 28 | 28 | 28 |
少女向け | 36 | 34 | 35 | 33 | 33 | 32 |
青年 | 60 | 57 | 53 | 50 | 47 | 46 |
レディスコミック | 61 | 59 | 53 | 47 | 47 | 45 |
4コマ | 22 | 22 | 20 | 20 | 20 | 19 |
パチンコ・パチスロ | 13 | 13 | 10 | 9 | 8 | 7 |
BL | 17 | 16 | 16 | 16 | 16 | 16 |
趣味・スポーツ・その他 | 7 | 9 | 7 | 7 | 5 | 5 |
成年 | 41 | 36 | 31 | 27 | 27 | 27 |
合計 | 288 | 276 | 252 | 237 | 231 | 225 |
電子の動き
アプリ乱立で、どこで何が読めるのか、など読者にも混乱。
「待てば無料」というビジネスモデルもあるが…。
まとめ買いと、新刊と、単話販売と、売れ方は様々。
違法サイトの影響も大きいと推測される。
人気作品
ビッグタイトルの初版部数の低下が顕著。
初版100万部越えは、ONE PIECE、進撃の巨人、HUNTER×HUNTERの3作品しかない。
スマッシュヒットとしては、僕のヒーローアカデミア、約束のネバーランド。
ネット発小説のコミカライズでは、転生したらスライムだった件。
アニメ新シリーズ効果で売れている、CCさくら。
他にもアニメ関連では、賭けグルイ、メイドインアビス、小林さんちのメイドラゴン、魔法使いの嫁。
ヲタクに恋はむつかしいは、5巻550万部で単巻100万越え。
実写連動としては、ちはやふる、あさひなぐ、きょうは会社休みますのヒット。
青年誌では、スマッシュヒットから今後のメディア化作品も。
響〜小説家になる方法〜、空母いぶき。
手堅い売れ方を示す、ジョジョリオン、ハンチョウ。
作者への支持がしっかりしてる、ジャンク・ランク・ファミリー。
TVの情報番組もヒットに貢献。
傘寿まり子、ペリリュー 楽園のゲルニカ、昭和天皇物語など。
Web連載からの注目作品は、電子がきっかけで紙が伸びる場合もある。
ねねね、凪のお暇など
おわりに
単行本でも、電子が神を上回る状況。
この差はどんどん広がっていくのでしょう。
過去作品の(広告付き)無料配信や、一日一話読めるアプリなど、電子の便利さ・手軽さが存在感を増し、その読者が「漫画を読む」という楽しさをさらに求めてコミックスを買う。
というのが理想なんだろうけど、それが上手くいってるのかどうか?
作品と読者の出会いはどこに。SNS?バナー広告?違法サイト?
書店で買うだけではなく、電子で読む場合は、スマホで、PCで、タブレットで、と様々な経路があるのですが。
読者は作品を物理的にどう読むのか、というのは個々人で差があるという状況になりつつあるのです。
出版社は様々な試み(例えばコミックDAYS、例えばゴラクエッグ)をしていますが、どれだけの変化が起きているのか。
しかし、漫画雑誌が売れない、減っていくという傾向はもう歯止めが効かない。
コンビニも雑誌の扱いを減らし、書店は閉店し、駅のキオスクで買う人も減ってる。
ネットで無料発表された小説を書籍化して、それをコミカライズ、というのも増えています。
作品がどう作られるか、というのの変容も止まらないでしょう。
漫画の未来は、いったいどっちだ。
といった所で今回はここまで。
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- コミック誌の年間販売部数、ついに5億部を割り込む。出版月報「コミック市場2012」のデータが衝撃的すぎる。
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