情報中毒者、あるいは活字中毒者、もしくは物語中毒者の弁明

情報中毒者、あるいは活字中毒者、もしくは物語中毒者の弁明


漫画、あるいは小説、もしくはエッセイなどの
印象、あるいは連想、もしくは感想を書いてるBlog。

2021年のコミック市場は、売り上げも単行本新刊点数も過去最高を更新。電子と単行本は伸びたが、紙の雑誌は低落が続く。



 2021年、コミック市場全体は前年よりも633億円、10.3%増。
 紙の雑誌が11%減、紙のコミックスが0.4%増、電子が20.39%増。


 そして、出版全体の4割をコミックが担ってるという規模になりました。
 各出版社のサイト・アプリでの無料配信や連載もあるし、実質規模はさらに多いのかも。

 ということで、出版月報2022年2月号、特集「コミック市場2021」に掲載されたデータなどより。




2021年の簡単なまとめ

  • コミック市場全体の販売額はさらに増え、史上最高額を更新
    • 鬼滅が終わっても、全体の売り上げは伸びた
    • 電子は増加が続き、2021年から694億円もの増加
      • 電子の増分だけで、紙の雑誌全ての売り上げよりも多い
    • 電子のレーベルも増加が続いてる
  • 完全に電子が主力に。だが、紙で売れてる作品もある
    • 返品率は微増
  • 紙の漫画雑誌は、さらに下がり続けてる。前年比13.6%減。販売部数は最大時の十分の一。(最大時は13億4千万部)
    • 銘柄数も減って191誌。(最大時は328誌)
  • 単行本新刊点数は13,420点で、最高を更新
    • 月1100点超え。電子のみやアプリ限定配信も考えると、総数はさらに多い
  • 紙の単行本の売り上げ金額は前年より多いが、部数は前年より少ない
    • 定価値上げの影響。元が安すぎたってのもある




2021年販売金額(億)販売部数(万冊)
雑誌(紙)55814,878
単行本(紙)2,08737,085
電子(雑誌+単行本)4,114-




 以下、データは出版月報2022年02月号や、過去分からの引用になります。


 全体の販売金額は、紙は雑誌・単行本計で0.3%の減少。単行本が0.4%上昇したが、雑誌が11%減少したため。
 電子は20.3%の増。
 全体で10.3%の増。

 
 


 紙の雑誌は全体で558億円。最大時から83%減り、1/5以下という事に。


 

 ただ、紙で連載されてる作品も、各社のサイトやアプリで後追い連載されてたりするんで、「連載を追っている」人の数は減ってないのかも?



近年の傾向と電子コミック



 紙での販売部数・販売金額は、雑誌激減、単行本は部数は微減、売り上げは微増。
 紙の雑誌は昨年比でさらに10%以上落ち込んで、26年連続のマイナス。
 1億5千万部を切りました。



 


 時には、増刷が掛かったり(進撃の巨人最終回の別マガ、東京卍リベンジャーズ付録の別コミ)、グラビアやクリアファイルで売れ行きのいい号もあったりするけど、退潮傾向は否めない。
 コンビニでも雑誌・書籍コーナーが縮小される店も多かったりします。




販売部数雑誌計(万冊)前年比単行本計(万冊)前年比
201439,75590.2▼44,038100.4△
201534,78887.5▼40,25091.4▼
201629,90085.6▼37,02192.0▼
201726,59888.96▼31,60885.38▼
201823,51188.39▼28,92391.51▼
201919,93684.79▼29,960103.59△
202017,22986.4▼38,151127.3△
202114,87886.4▼37,08597.2▼



 販売金額を見ると、電子の伸び方の凄さがわかります。

 


 

 

販売金額紙雑誌計(億)前年比紙単行本計(億)前年比
20141,31391.3▼2,256101.1△
20151,16688.8▼2,10293.2▼
20161,01687.1▼1,94792.6▼
201791790.26▼1,66685.57▼
201882489.86▼1,58895.32▼
201972287.62▼1,665104.85△
202062786.8▼2,079124.9△
202155889.0▼2,087100.4△




 単行本の販売部数は、1000万部減ってるけれど、販売金額は8億円増えてる。
 これは定価値上げの効果。2022年にも値上げの動きがあるが、これまでが安すぎたというのもある。


 電子コミック市場はさらに伸び、1年で694億円も上がった。
 つまり、電子の増分だけで紙雑誌全体の販売金額よりも多いという事。
 TVCMやネット広告も、かなりの量が投入されているが、それに見合うだけの売り上げがあるという事だ。



電子コミック(単行本+雑誌)販売金額(億)前年比
2014887121.34△
20151,169131.79△
20161,491127.54△
20171,747117.17△
20182,002114.59△
20192,593129.5△
20203,420131.9△
20214,114120.3△



コミック文庫とコンビニコミック




 コミック文庫は19.5%の減。新刊の減少が続く。
 コンビニコミックは14.9%の減。
 既刊・旧作品もどんどん電子化され、どこの電子書店・アプリも「業界最大級」を謳う為に配信してるという影響も大きいだろう。

雑誌銘柄数と、単行本の点数



 紙の雑誌は、191誌。
 連載も電子配信で同時や後追い(1週遅れや有料先読み)があるものの、ブランドとして維持したい雑誌もあるだろうし、宣伝効果もあるだろうし、完全に置き換わる事は当分無いかも。

 




 単行本の年間新刊点数は、昨年から微増の13,420点。
 月1100点を超え、とてもじゃないけど追い切れる量ではないし、電子・アプリ限定なども含めるとその量はさらに多いと推測される。

 

 今はほぼ全ての新刊が電子同時発売となっているが、特装版、書店限定特典・ペーパーなど、紙版ならではの売り方も様々に工夫されている。
 あとは、紙だと販売停止とか電子書店のサービス終了とかに影響受けないんですよね。


雑誌銘柄数前年比単行本新刊点数前年比
201425291.3▼12700104.4△
201523794.1▼1256298.91▼
201623197.5▼12591100.2△
201722597.4▼1246198.97▼
201820591.1▼129771104.1△
201919997.07▼1280598.67▼
202019296.5▼12,939101.0△
202119199.5▼13,420103.2△




 WEB、アプリ、twitterなどが初出の場合、少年少女男性女性親父レディス、どの層をターゲットにというのがあまり意味を持たない場合もある。
 エッセイ漫画などは、雑誌に掲載されるよりもネットの方が「刺さる」人に当たる可能性が増えるのかも。
 「ちいかわ」は何と言えばいいのかなあれ。今の所唯一無二っぽくもあるし。

種類20142015201620172018201920202021
少年向け2728282828282829
少女向け3533333229282828
青年5350474644424039
レディスコミック5347474542444544
4コマ2020201915141313
パチンコ・パチスロ109875544
BL1616161615131313
趣味・スポーツ・その他77554433
成年3127272723211818
合計252237231225205199192191

電子の動き


 昨年から約700億円、20.3%の伸び。


 紙で売れてる作品は電子でも売れてて、呪術、東卍などが牽引。
 TVCMも大量にうたれてるし、レーベル・アプリ・サイトも増加。
 独自色を出したい出版社側と、囲い込みをしたい電子書店アプリ側と、色々増えるのは面倒な読者側と、最適解はどこにあるんだろうか。


 ユーザーを自社に引っ張るための施策としては、セール以外にも先行配信、独占配信、初回割引など。


 異世界ものは流石に伸びが止まりつつあるが「悪役令嬢」ものにヒットが多い。
 「悪役令嬢転生おじさん」はいいぞ。


 縦スクロールをやる出版社も増えてる、との事だけどどうなんでしょうね。
 本宮ひろしがヤンジャンでそれ意識したのを描いてたりするけど。


 規制派が色々言ってるの、これだけ市場が大きくなったことで、難癖付けてみかじめ料取りたいっていう思惑があるんだろうなあ、とも考えられますね。

人気作品



 筆頭のヒット作は「呪術廻戦」と「東京卍リベンジャーズ」。どちらもとんでもない売れ方
  



 完結した「進撃の巨人」はネットでの大量無料公開で呼び戻して売れた
 




 ポプラ社のノベライズも好調な「魔入りました!入間くん」、同じチャンピオンの「桃源暗鬼」もヒット
  




 要因は色々あるが作品の地力が強い「葬送のフリーレン」「キングダム」「【推しの子】」「ウマ娘シンデレラグレイ」「その着せ替え人形は恋をする」「吸血鬼すぐ死ぬ」
   
   




 WEB初出だと「SPY×FAMILY」「怪獣8号」「ダンダダン」「僕の心のヤバイやつ」「プロミス・シンデレラ」「かわいいだけじゃない式守さん」「WIND BREAKER」「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」「私の幸せな結婚」などは紙でも売れてる。
   
   
   




 電子でも好調なのが「ザ・ファブル」「ハコヅメ」「聖女の魔力は万能です」「悪役令嬢転生おじさん」など。
    



おわりに



 鬼滅の大ヒットの後で失速するのではなく、「漫画を読む」というのが根付いた結果としての市場伸長とも言えそう。
 過去作品へのアクセスのしやすさや、電子での無料開放などで時間の奪い合いに勝ってる、というのもあるのか。


 雑誌で追うのから、単行本でまとめて読む、WEBで連載を追いつつ単行本は買う、サジェストから読んでみる、広告から、などなど。
 漫画の入口や読み方そのものが変化してきた結果としての現在なのでしょう。


 漫画雑誌も、ほぼほぼ電子同時配信になってる(隔週以上で最後の砦だった「ビッグコミック」もついに電子配信された)けど、どの位売れてるのかは公開されないので不明なんですよね。
 また、雑誌によっては、紙版と電子版で表紙や内容が違ったり、アンケートやプレゼントに応募できないものもありますが、徐々に減りつつある、かな。
 過渡期でもあろうし、変革期でもあろうし。


 それでも、最大のヒット作は紙の週刊少年誌から出て来てるというのは変わっていないので、そうじゃあないのが出た時が完全なターニングポイントなのかも。
 何時になるのかはわからないけどね。


 漫画の未来は、いったいどっちだ。


 といった所で今回はここまで。



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