情報中毒者、あるいは活字中毒者、もしくは物語中毒者の弁明

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漫画、あるいは小説、もしくはエッセイなどの
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黒髪ロングと夜の闇。松本零士「雨月物語」に見る、夜の黒髪の表現について。




 今年も9月6日は黒髪ロングの日(http://d.hatena.ne.jp/mercury-c/20120808/1344433348)、ということでちなんだ話を。


 松本零士は切れ長の瞳とロングヘアの女性キャラを多く描いていますが「黒髪」であるのって非常に少ないんですね。
 金髪だったり、赤毛でも作画表現上は白だったり。


 で、珍しく黒髪ロングなキャラクターを使ってるのがこの「雨月物語」。
 小学館ビッグコミック1972年7月号が初出。
 



 全編夜が舞台の作品なのですが、同じ人物を描く上で、3種類の表現を使い分けてるんですね。


 一つ目は、輪郭に沿って白くする描き方。
 


 多分、普通の表現として「闇の中に居る黒髪の人物を描け」と言われたらこうなるかと思います。



 二つ目は、背景の夜とあわせてベタとし、輪郭なしという描き方。
  


 扉ページもこの技法。印刷で潰れることを嫌ってこうしたというより、人物の有り様として夜と同化しているという表現なのかも。





 三つ目は、水面に浮かび上がる表現で、逆に白く(トーンを貼ってはいます)する描き方。
 


 夜の闇と水面の闇では、水面の方が暗い、という深さをも表現してるのですかね。



 この内、後ろ二つの表現はかなり珍しいのではないかと思われます。


 他に、「夜に黒髪キャラが出てくる」松本作品探してみたら「ナウマンの足跡」ではこういう感じ。
 


 夜の方をトーンにしてるんですね。これも特殊な気がする。




 松本先生のキャラに黒髪が少ないのって、ベタを塗り分けるのが面倒くさいっていう理由もあるのかもなあ、と思いつつ、今回はここまで。