情報中毒者、あるいは活字中毒者、もしくは物語中毒者の弁明

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漫画、あるいは小説、もしくはエッセイなどの
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「極ラクゴ」と「昭和元禄 落語心中」全然違う二つの落語漫画が、どっちも面白い




 落語という大きなくくりで言えば同じでも、その中に人情噺、滑稽噺、芝居噺、古典、新作と色々あるように「落語漫画」も色々。
 で、つい先日発売になったこの二作品


 片や、(原作付きではあるけど)バイオレンスで大雑把な作風で知られる平松伸二が、週刊漫画ゴラクというオヤジ漫画雑誌で描いた


極ラクゴ 1巻―柳亭奇譚誘噺 (ニチブンコミックス)
極ラクゴ -柳亭奇譚誘噺- 1巻



 片や、BL作品を中心に活躍し、繊細な作風で知られる雲田はるこが、ITANという女性向けの季刊誌で描いた


昭和元禄落語心中(1) (KC×ITAN)
昭和元禄落語心中 1巻


 この二作品、色んな点で対照的。分かりやすいところだとこんな感じ。


ラク落語心中
掲載誌週刊漫画ゴラクITAN
発刊雑誌ペース週刊季刊
過去作品バイオレンスBL
対象読者男性中心女性中心
形式一話完結長編ストーリー
主題噺そのもの落語家達の人間模様
時代現在1970年代
噺家の移動方法人力車自動車
主役師匠弟子
人死に沢山死ぬ過去の事
舞台お座敷・独演会寄席
単行本おまけ噺の解題寄席案内



 どっちが良いとか悪いとかじゃなくて、これだけ差があってもどうにかなるんだってことでしょうか。


 ところが、どちらも一話目に取り上げられた噺が「死神」ってのは同じなんですね。とっつきやすい噺ではあるか。
  



 「落語心中」は押しかけ弟子入りと見る者から演じる者への成長が描かれているのに対して、「極ラクゴ」は噺家としては完成済みってのも違うかな。


 ちょっとおかしいのは、舞台が現代の方が人力車、過去の方が自動車ってあたりか。
 人力車を使った噺家の移動って明治時代ですよねえ。
  


 あ、そうそう、平松先生の方は流血も殺人も沢山あるのでご注意。



 どっちも落語が好きだからこそ題材として取り上げる、これは当然なんですが、その上でなお「落語って楽しいですよ〜〜!!」という作者の声が聞こえてきます。


「極ラクゴ」の小ネタ

 
 こんな方が出ております。そう、板垣総理。
ブラックエンジェルズ」や「マーダーライセンス牙」と同じ世界なんですね。



 原作の安江うには、平松伸二の奥さんとの事。
 ビッグコミック増刊などで数作品落語漫画を発表してましたが、原作はこれが初になるのかな?


「落語心中」の時代設定など

 結構現実とは変えてある所が多いです。
 時代設定としては1970年代前半なので、談志らが若手として活躍した落語ブーム時、前座の数がどんどん増えてたって頃。 でも作中ではこんな台詞が。
 


 あと、歌舞伎座で初めて独演会を開いた落語家は、六代目三遊亭圓生で1979年の事。
 タイトルの「昭和元禄」は、師匠たちが若かった20年前、1950年代のことなんでしょうな。




 そうだ、どちらの作品も「おあとがよろしいようで」って一度も出てきませんよ。
 といったところで今回はここまで。