情報中毒者、あるいは活字中毒者、もしくは物語中毒者の弁明

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漫画、あるいは小説、もしくはエッセイなどの
印象、あるいは連想、もしくは感想を書いてるBlog。

漫画の「完全版」ってこれといった定義が無いよ、という話など



 MASTERキートン、ついに復刊ですか。

 しかも「完全版」ということなのですが、じゃあ「完全版」って何なのか。
 今の所、同じ出版社ですら作品毎に違うんで、ちゃんと定義がされているわけじゃないよね。

漫画単行本の復刊形態


 今、旧作の再刊・復刊をする場合って

  1. 文庫版
  2. 新装版
  3. コンビニ版
  4. ワイド版
  5. 雑誌サイズリミックス版
  6. オンデマンド版
  7. 電子書籍*1

 などが考えられます。
 未単行本化の状態からいきなりコンビニ版とか、オンデマンド版なんてのも含めるとバリエーションは豊富。


 そして、人気のある作品の場合は「完全版」という名目で出される場合があります。
 スラムダンクあたりが嚆矢でしょうか。


 SLAM DUNK 完全版 全24巻・全巻セット  (SLAM DUNK 完全版) (ジャンプコミックス デラックス)


通常の単行本と完全版の比較


 普通*2の単行本と比較をすると、

  • 雑誌掲載時のカラー再現
  • サイズの拡大(とはいえ雑誌サイズよりは小さい)


 といった所はほぼ共通なのですが、それ以外についてはプラスマイナスどっちの要素もありえます。
 なので「雑誌再現版」も「未完結保管版」もみんなまとめて「完全版」になっちゃってるというのがわかりにくい。

  • プラス要素
    • 未収録話の単行本化
    • 絶版からの復刊
    • 加筆・修正
      • バー描き下ろし
      • 絵の変更
      • ストーリーの補完
      • 口絵追加
    • カラー化
    • 解説の追加


 「シャーマンキングシャーマンキング 完全版 27 (ジャンプコミックス)なんかはこういう意味ではプラス要素が殆どだったのかな、とも。
 もちろん、既存単行本読者には不親切ではあるのですが、対決と後日譚まで書き下ろしですからねえ。



 完全版という名でなくても、AKIRAの総天然色版*3とか、北斗の拳のカラー化版などの例もあります。
 総天然色AKIRA〈1〉 KCピース 北斗の拳 1 MASTER EDITION―Full Color (ライジンコミックス マスター・エディション)


 本当にプラスか、は判断が分かれそうですが。


  • マイナス要素
    • 旧単行本のカバー関連部分はほぼ無くなる
      • バー
      • 見返しのコメント・自画像
      • 裏表紙
      • 裏表紙見返しのイラスト
      • 見返しに4コマ漫画があったらそれとか
      • バー下のイラスト
    • 単行本での追加要素の削除
      • 空白ページ埋め漫画
      • キャラクター関連のコメント
      • ラフカット
      • 読者投稿子おたより・イラストページ


 分かりやすい例で言えば、ドラゴンボールの背表紙繋がり、スラムダンクの丸コマ漫画、るろうに剣心の登場人物解説など。
 逆に、「ヒカルの碁ヒカルの碁 完全版 1 (愛蔵版コミックス)のネームの日々みたく、オマケ要素残したままで拡充する場合もありますが。
 あと、ヒカルの碁の場合、画集で旧コミックスのカバーは補完できるんだったかな?そういう所にも差がありそうですね。


 また、これらのオマケ要素は、完全版に限らずワイド版や文庫版でも削られちゃうことが多いですね。
 「帯をギュっとね」のカバー折り返し4コマとか。


 将来、ONE PIECEの完全版が出る時にSBSはどうなっちゃうんだろう。


 そもそも、それまでに売っていたものは「不完全版」なのか?という疑問も出てくるわけです。
 通常版から完全版出版へのスパンの長さも問題になりえるのかしら。
 ハガレンとか。

ちょっと納得できない例


 それまで出てたのが不完全版、なのかという問題もなのですが、完結した作品でない場合、既存単行本と並列に出してるとなんかなあ、という場合も。


 例えば、作者のこだわりの為の完全版の筈なのに、それ以前のバージョンの絵が出版され続けるのはいいのか、という場合もあります。
 具体的には、「バスタード」BASTARD!!―暗黒の破壊神 完全版 (Vol.1)


 連載が完結していないってのはまあしょうがないんですが、完全版出し始めた後になっても初期部分がコンビニ版として出版されてる。
 ナメてんのか。


 また、永野護の「ファイブスター物語」は現在、雑誌掲載再現版を謳って「REBOOT」が刊行中なんですが、


 ファイブスター物語 リブート (1) LACHESIS (ニュータイプ100%コミックス) ファイブスター物語 (1) (ニュータイプ100%コミックス)


  • 1,2巻は新年表にあわせた再編集&設定変更版で出しなおし(1998EDITONとか)
  • 「TALES OF JOKER」という出版形態で、雑誌そのまま再録を売りにした自社出版


 ってのを既にやってたんですよ。
 また、扉絵が単行本では無くなってたのをニュータイプの別冊付録としてつけてたりもしたんですよね。
 結局何を読ませたいのか分からない。買い足させたいだけとしか思えない。流石角川。



 とはいえ、しょうがあないのかなあ、とも思うんです。
 だって、この2例の場合、作者が新しい絵を描いてくれることに期待する先払いのお布施みたいなものであって、作品への対価じゃあないもの。
 生きて漫画を描いてくれる可能性が少しでも出るならそこに賭けたい、と思えばこそ、分かってても買っちゃうってのが多分にあると思います。


他業界もまあ似たようなものか


 などといっては見たものの、これって漫画だけじゃあない、というか漫画は後発でしょう。
 音楽業界で考えると、同じ楽曲が

 というように複数回出されるのはままあることですし。
 映画のDVDやBDでも、

  • 劇場公開版
  • ディレクターズカット版
  • ディレクターズカット完全版
  • メイキング映像特典付き版
  • デジタルリマスタリング
  • オーディオコメンタリー追加版
  • HDリマスタリング
  • シリーズ三部作収納BOX版


 みたく後から後から色々と。
 どこが違うのそれ、と言いたくなる場合も。


 小説・活字の場合は、

 と出る場合もありますが、そこで大きく変わるか、というと絵・音楽・映像とは違うからなあ。
 装画・挿絵の変化がどのくらい影響する作品かにもよるか。



 どんな創作物でも、作者が生きてる間は本当の意味での完全版って存在し得ないのかも・・・。
 ああ、未完になったのを他作家が描き継ぐ場合もあるのか。
 009の天使編も、デューンの完結編も、時の車輪の最終巻*4も、出る可能性はあるはず。あるよな?



 といった所で今回はここまで。

*1:Jコミなども含む

*2:これも「普通」って何、とい話になりますが、そこは割愛

*3:海外版を基にしたオールカラー版

*4:これはちゃんと執筆されてるらしいですが・・・