日本で一番売れている漫画と、日本で一番売れている「アウトロー」が主人公の漫画は、実は同じ作品。
そうもちろん「ONE PIECE」。何せ主役は海賊。法の内外で言えば主人公は外側を行っていますし、最新刊の見返しコメントでは尾田栄一郎自らが「任侠漫画」とまで言っています。
これに限らず、面倒くさい言い方だと、ロウかカオスかで言うとカオス側に主人公が属している、不良やなんかが主人公な漫画って色々あるんですが、今どうなってるのかという話を、何回かに分けてしてみたいと思います。
まずは現在、少年誌でアウトローが主人公、もしくは、主人公の属性としてアウトロー的なものが付随されている作品というのはどの位あるのか。
「少年誌」というくくりはアバウトではありますが、ここでは雑誌名に「少年〜」とあるもの、とします。
週刊少年ジャンプ、週刊少年マガジン、週刊少年サンデー、週刊少年チャンピオン、月刊少年マガジン、月刊少年チャンピオン、別冊少年マガジン、月刊少年サンデー(ゲッサン)、月刊少年ライバル、月刊少年シリウス、月刊少年エース、月刊少年ガンガンですかね。
自分が読んでない雑誌については書かないか、不確かな知識を元に書く事になるので間違ってたらご指摘いただければな、と思います。
雑誌と作品
主人公らの種別というか属性・・・みたいな。物語の展開上、連載最新時点ではそうじゃなくなってる場合もありますが、一応でこんな感じかと。
不良とヤンキーは本来違うのかもしれませんが、一括して「ヤンキー」としています。
ヤンキー要素を持つ作品は
- 週刊少年ジャンプ
- 週刊少年マガジン
- A-BOUT!@市川マサ(ヤンキー)
- GTO-SHONAN 14DAYS-@藤沢とおる(元ヤンキー)
- ヤンキー君とメガネちゃん@吉河美希(ヤンキー?)
- 週刊少年サンデー
- 週刊少年チャンピオン
- 月刊少年マガジン
- なし(敢えて言えば、「なんと孫六」が一時期はそうだったのですが・・・。)
- 月刊少年チャンピオン
逆にヤンキー要素が無いか薄いのは
- 週刊少年ジャンプ
- 家庭教師ヒットマンREBORN!@天野明(マフィア)
- ONE PIECE@尾田栄一郎(海賊)
- 週刊少年マガジン
- BLOODY MONDAY Season2 絶望ノ匣@龍門諒×恵広史(ハッカー)
- 週刊少年サンデー
- ゲッサン
といったところでしょうか。
現在のヤンキー漫画の主戦場はまだ少年誌とは言えそうですが、バイク・自動車・暴走族を扱った作品が無いんですね。*1
傾向
こうして並べてみると、
- 主人公の年齢は、中学生〜高校生くらい
- 暴走族・バイク関連作品無い
- ジャンプはどれもファンタジー能力がらみ
- マガジンはコメディー要素強い
- サンデーはラブコメ寄り
- チャンピオンは月刊あわせて多い、喧嘩メイン
- 「番長」って言葉使わないのが殆ど
- 一匹狼裏職業系って居ない
と、少年誌的にはあたりまえの事と、15〜30年くらい前とは大分事情が変わっているのが混じっている、てなことが言えそうです。
しかし、「ヤクザ」は居ない。不思議なんだけど、なんか制約あんのかしら。
余談 古い「番長漫画」「不良漫画」の話を少し
現在のヤンキー漫画においては、「番長」というものがあまり出てきません。
「金剛番長」(2007年〜)はその辺の言葉を現代に放り込むとどうなるかをやってみせた好作だとは思いますが、どこかレトロ復刻の香りがしていたのも確かな話。
言い方が違うだけというのではなく、1970年代から1980年代の不良漫画とは主人公や不良の学校への属し方みたいのが違います。
ある種*2の番長・暴走族漫画などおいては、学校や組織は一枚岩であり、統率者の号令の下その配下は一丸となって動くというパターンがありました。
大きな出入りがあるときに、番長の号令に従って「○○高校80名推参」とか言っちゃうやつ。HELLSINGの騎士団シーンみたいなの。
これって、戦国武将や軍隊を描いた作品なんかと同じなんですよ。
学校=国、番長組織=武士、という構造。アタマ同士のタイマンは一騎打ち。
一般生徒が戦いに関与することは無く、「制覇」されても上に立つのが変わるだけ。
「学生連合」みたいな組織があれば、それは幕府であり朝廷であり。
「熱笑!!花沢高校」(1980年〜)では、虎に付くかゲリラに付くか、というところで各校の戦力人数移動が、まさに戦国の合戦の様に描かれましたし、「Let'sダチ公」(1985年〜)では征服した学校の番長が敵方に取り込まれ、使われていたりもしました。
「ヤンキー烈風隊」(1986年〜)でも、リーダーの命令は絶対だったり、そういう表現にはことかきません。
自分の学校を他校の不良などから守る・・・でも番長組織である、というのの究極的な形としては、「魔界学園」(1989年〜)における護衛団がそうだと思うのですが、これこそ(異能力者によって編成された)軍隊を別の名前で呼び変えただけとも言えるかも知れません。
今のヤンキー漫画で、そういう学校・組織同士の全面戦争って殆どありません。
敢えて言うなら、WORSTの鳳仙軍団なんかはそうですし、主人公の花は「鈴蘭の番長になる」という復古を目指している、また、今雑誌で連載している話ではあの「帝國」が侵略を開始しそうなので連合を組んで対抗しよう、ってな話なんで傾きつつある所。
しかし、基本的にもう少し細かい人数単位で話が進む作品が多い。
実態に沿ったリアルになっている、とも言えるのかしら。
もちろん、さらにそれ以前「ハリスの旋風」(1965年〜)、「夕やけ番長」(1967年〜)の様な初期学園漫画、「男一匹ガキ大将」(1968年〜)や「男組」(1974年〜)の様に後には巨大権力と戦うタイプなど様々な方向の作品があり、また変化もしているので時代順に作品を並べてみる作業が必要になるかとは思いますが、こうした、武士・軍隊・ヤクザ的な「番長」「不良」を描いた作品というのはもう出てこないか、敢えて復古調として描かれる、ということになると思われます。
さて、学校単位ではなく個々の不良、仲のいいのがつるんでるという単位がメインで描かれるのがどのあたりからメジャーになったのかというと、やはりヤングマガジンで連載された「BE-BOP HIGH SCHOOL」(1983年〜)でしょうか。
少年誌ではなくヤング誌からの流れが、「今日から俺は!!」(1988年〜)や「カメレオン」(1990年〜)などに繋がっていったのだと思います。
といったところで、続きはそのうち。
オヤジ雑誌におけるアウトロー作品の長期連載、または、高橋ヒロシファミリーと青年雑誌におけるヤンキー漫画の話になる予定。
*1:マガジンSPECIALにあるくらい。あれは週刊少年マガジンの増刊ですが雑誌名に「少年」が無いんだよなー
*2:主にチャンピオンで連載された