情報中毒者、あるいは活字中毒者、もしくは物語中毒者の弁明

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漫画、あるいは小説、もしくはエッセイなどの
印象、あるいは連想、もしくは感想を書いてるBlog。

その昔「ハイジ」とは別の「アルプスの少女」という物語が存在してた



 その昔っても、今から90年くらい前の話だったりしますが。


 この「アルプスの少女」、大正九年(1920年)発行の岩田九郎「講話自在 模範のお噺集」に収録されていて、こちらにおける主人公の名前は「ナンシー」であります。


 



 アルプスの少女ハイジ - Wikipedia日本語翻訳 主要本紹介によりますと、ヨハンナ・スピリの「Heidi」が日本に紹介されたのはこの本と同じ大正九年、すなわち1920年で「ハイヂ」というタイトルで邦訳が刊行されたということです。
 しかし、この時には「アルプスの少女」というタイトルは使われておりません。


 前記2サイトにおける資料に拠ると1934年の岩波文庫版にて「アルプスの山の娘」アルプスの山の娘―ハイヂ (岩波文庫)、WWII終戦後の1947年に初めて「アルプスの少女」というタイトルになった様です。
 そして、1952年の角川文庫版で初めて「アルプスの少女ハイジアルプスの少女ハイジ (角川文庫)というフルタイトルが使われたということです。
 まあ、原題からして「ハイジの修業と遍歴の頃」*1「ハイジは教えを正しく使う」*2とアルプスのアの字も無いわけでして。



 もちろん今は宮崎駿らの手がけたアニメアルプスの少女ハイジ 35周年メモリアルボックス (期間限定生産)のイメージもあいまって、ハイジ以外をさすことはほぼありえないわけですが。
 中にはパチモノっぽい挿絵のもありますな。アルプスの少女  世界名作ファンタジー (25)アルプスの少女ハイジ (こども世界名作童話)なんかはアニメの影響から抜けようとして間違ったっぽいですが、アルプスの少女ハイジ (The Kumon manga library)はなんといがらしゆみこが漫画化してたり。




 閑話休題




 では、この元々の「アルプスの少女」はどんなのだったか、という話。



 収録されてる本のサイズはこのくらい。*3こんなマークが入ってます。
  



 中表紙はこんな。
 



 著者のはしがきによると『本書は、東京市*4及各地の種々なるお話会に於て、私の講演したお話の草稿を訂正増補したもので、各篇の初めに添えた「実演上の注意」は此等の経験を基礎として考えたものであります』ということで、書籍になるよりも前にお話として存在し、人口に膾炙していたと考えられます。*5
 その際にお話のタイトルをはっきりと言っていたかどうかは判然としませんが*6、とにかく大正の時点では「アルプスの少女」と「ハイジ」は別物だったと言えると思います。


 はしがきの日付と署名。
  





 奥付に拠ると、初版発行が大正九年六月、同年九月までに四版ですから、かなり順調に版を重ねているのがわかります。
 定価は壱圓八拾銭なので、現在の物価に換算すると*72000円弱くらいですかね。


 奥付。
 


 奥付部分拡大
  

 


 収録されている話は全十二話。道徳教育と国威発揚が混じったような、でも海外ネタもあるというなんだかよく分からないラインナップ。


  1. 拳骨山
  2. 紫の煙
    • ミュラーの「ブレスローの鐘」から大幅に変えられたフーゴのスタンド独逸の王様と鐘の話。
  3. 少年燈台守
    • 「お祖父さん物語」の中の「鼓手レベッカ」を改作した、祖国を護る小国民の話。
  4. 芋軍曹
    • 誰も知っている*8「ナショナルリーダー」五巻の巻頭にある「軍人フリッツ」を元にした父と子の話。
  5. 鰐の皮
    • 矢野龍渓の「浮城物語」の一部分より、時代を変えて前後をつけてまとめた冒険譚。
  6. 愛国のひげ
    • 中国の武将、蘇武の話。
  7. スワロフの最後
  8. 暗闇峠
    • 「ナショナルリーダー」の「ホールバートと彼の犬」を元にした友情譚。
  9. 尊い
    • 交通事故*9は怖いよね、と言う話。クオレの一部が元とのこと。
  10. アルプスの少女
    • 後述
  11. 錦の御旗
  12. 誉れの飛行機
    • 磯部少佐の「空の戦」から作られた巴里のギャロー・ペグー兄弟を主人公とした戦闘機パイロット譚。敵方としてあのインメルマンが出てくる。

 中身は当然旧仮名遣い。
 



 本文天側に書かれている各話のタイトルも、右から左に「女少のスルプア」となっています。
 




 では、実際にどういうお話だったのか。
 下記に書き出して見ましょう。



 以下、表記は基本的には現代仮名遣いに改めました。繰り返し表記についてはPC上でそれに代替する表記が存在しない為書き直しています。
 また、現代において常用外の漢字表記や、読みづらいと思われる書き方も多少直してあります。
 思つた>思った、辷る>滑る、其>その、ゐ>い、など。


アルプスの少女

実演上の注意

  • 中心点


 この話は「暗闇峠」と似た話ですが、その主眼とする所は全く同様であります。

  • 原作


 セントニコラスの中の「雪の王」*10を大に改作して得たもので原意とは殆ど異なったものになりました。


  • 聴衆


 尋常五六年頃*11の女生徒に適当で、なるべく人数の少ない方がよろしいと思います。教室等で時間のある時に話すのがよいと思います。

  • 時間


 二十分内外です。


  • 構造
  • 本話
  1. アルプス山麓の一軒屋
  2. 山路の雪
  3. 修道院の猟師
  4. 猟犬カスパーの手柄
  • 結び


 皆さん。アルプス山脈はどこにあるか御存じですか。そう、伊太利イタリーの北、独逸ドイツの南の方に高く天を摩して連なっている山脈です。今日はそのアルプス山に起こった出来事をお話いたしましょう。

  • 本話
  • アルプス山麓の一軒屋

 欧羅巴ヨーロッパの南に横たわるアルプス山脈の中に、セントベルナルドと言う高い峰があります。この峰の頂には一年中雪の消えたことがなく、深い谷間には幾千年の雪が残っているかもわかりません。その頂の近くには獣の棲家さえもあるまいと思われるのに、人の住んでいるお寺が一軒淋しく建てられているのです。此処は修道院と言って苦しい修行をする坊さんのいる所でございます。
 時は二月の始めて、アルプスは麓から頂上まで雪が真っ白く積って時折りチラチラ降って来るのでしたが、それをも厭わず頂上の修道院へと急ぐ四人の坊さん*12がありました。この一行がセントベルナルドの麓へ来た頃はもうとっぷり日が暮れて居ました。雪の夜道は歩くのも困難であるし、その上このような山では夜中から朝にかけてはげしい風が吹くと言う事を聞いていたので、先ず一夜を麓に泊る事に致しました。
 勿論田舎の事ですから宿などはありません、所々に猟師の家があるばかりです。四人の坊さんはとある灯の光の洩れている家の軒下に立って、戸をホトホトと叩いて
『もしもし、恐れ入りますが、この辺りの道に踏み迷った者です。どうぞ一晩お泊め下さい。』
と言いますと中の方からはやさしい少女の声で『ハイ。』
と返事がしてすぐ前の戸を開けました。四人は喜んで雪を払い中に入って見ますと、狭い家の中に炉があって火がチロチロ燃えています。『どうぞこちらへ。』と言われてよく見ると十四五の少女で、他には誰も居るようすがありません。
『お前さんお一人かい。』
とやさしく聞きますと
『イエ、お父さんと私二人です』
と言ってソッと吐息をつきました。見るからに打ちしおれて何か心配がありそうな様子です。四人の僧は優しく色々と聞き出しました。
『お父さんは何処へ行かれましたか。』
『ハイ、父は二日程前に頂上まで猟に行くと言って出たまま今に帰って参りません。私はもう心配で・・・。』
『それは気の毒だ。我々は明日は頂上の修道院に行くから良く探してあげよう。』
『エ!あなた方は頂上にお登りになるのですか。お願いです、どうか私もご一緒に連れて行って下さい。お父さんはその頂上の修道院へ行ってらっしゃるかも知れませんから。』
『オオほんとに可哀そうだ。よろしい連れって行ってあげよう。その代わり随分途中は辛い目に合わなくちゃならないよ。』
『有難うございます。どんな辛い目に合ってもお父さんにお目にかかるまでは、決して厭いませんから、どうぞお連れなさって下さい。私はナンシーと申します。』
と熱心に願ったので四人の僧もいよいよ明日は一緒に連れて行く事にきめ、尚も色々と話をしてその夜を明かしました。


  • 山路の雪


 朝の間は風が強いので家に居る事とし、五人は厚い外套を着たり雪靴を着けたり色々な準備を整えて、昼飯を済むとすぐ出発しました。ナンシーはこの辺の山家育ちで、まだ十四才の少女ではありましたが、雪には幼い時から馴れて居りましたので、人々に後れる事はありませんでした。
 山路は思ったより楽で、雪もやや固く、風は少しもなく三時間ばかりの間は変わった事もなくみな元気で上って行きました。所が日が少し西に傾きかけると今まで、晴れていた空が俄かにかき曇って来ました。とみるみる薄墨のような雲がムラムラと空に広がって来て、急にゾッとするように寒くなって来ました。遠方にゴウと言う風のうなりが聞こえたかと思うと、向こうの岩角の所を踊り越えてビウーッと激しい風が吹きつけて来ました。それと一緒にチラチラと降りかかった雪は一層はげしくなって、四人の僧と一人の少女を埋めるばかりに降って来ました。そのうちにも風は益々強くなって、その辺の地に積った雪を吹き捲くると、空から降る雪と地から吹き上げた雪とがゴタゴタになって、沢山雪を其処此処に吹き送ります。これはこのアルプス山に時々起こる所の旋風で、五人の旅人は不幸にもこの恐ろしい風の中に巻き込まれたのでありました。
 もうこうなっては仕方がない。暫らくどこかに身を隠そうと四方を探して見ても、みな真白い雪でゴウゴウと吹きまくる嵐は一層激しくなるばかりです。そのうちに最も激しい捲き風が非常に沢山の雪を持ってビウッと来たかと思う間もなく、五人の旅人はアッと言う間にその中に埋められてしまいました。その上へ上へと柔らかい雪は吹き集められて、あわれなナンシーは連れの人を見失ってしまいました。
 ナンシーは捲風がビウッと来た時は「ハッ」と思ったばかりで始めはどうなったのかさっぱりわかりませんでした。目がグラグラしたと思ったらもう全く四方が見えなくなってしまったのです。それでも身には少しも傷を受けてはいませんでした。
 落ち着いてきたナンシーは気がついて見るともう目も鼻も耳も雪だらけです。急いで起き上がろうとすると中々自由に動きません。体の上には沢山の雪があるし、また体の下にも沢山の雪が積っているのです。ナンシーはやっと息が出来るくらいで苦しいので一生懸命で立とうとしますとブスリブスリと下に入るばかりで一向に足のとまるようなものがありません。だんだんと体は下の方へ沈んで行ってやっと何か固いものが足にさわりました。
『ああうれしい。これはきっと地に足が着いたのだ。』
としっかと足を踏みつけて体を前に傾けて両方の手でザクザクザクと雪をかき、土地を蹴り口ではブツブツと雪を吹きながら、無茶苦茶に少しでも前へ前へと進んで見ました。
 こんな風で十間*13ばかりやっとのことで来ましたと思う頃にバッと滑ったと思うと、スッと体が雪の中から抜けて、空が見えたと思うと、そこは恐ろしい崖だったのでズルズルズルッと下の方に滑り落ちて、深い深い谷底の雪の中へドシンと横になりました。幸い雪が柔らかであったためにすこし腕を擦った位で他には大した怪我もありませんでした。
 雪の谷底に落ちたナンシーは、連れの坊さんたちはどうなっただろうかと考えたり、お父さんもやはりこの様に雪の中に落ちたのではあるまいかなどと考えました。そして自分の体はこれからどうなるのだろうかと思うと、急に恐ろしくなって来ました。そこで急にまた起き上がって前の方へ雪を掻き分けてかけだしました。しかし柔らかい深い雪ですからザクザク身体が入る上に、下には岩があったり、穴があったり一間行っては転び二間行ってはつまづき、三十間も行かないうちにすっかり疲れてしまいました。おまけに雪はひとしきり激しくなり日暮れの冷たい風がビウビウと吹いてきました。
 ナンシーはもう草臥れてしまいました。どこまで行っても雪ばかりで、上の道に出られそうにもありません。そこでドッカと雪の上に座ってしまいました。
『ああもう駄目だ。お父さんはどうなさったかしら。』
と両方の手に息を吹きかけながら*14、もう悲しくなってホロホロと泣き出しました。大アルプスの深い谷の気は一人の少女を抑えつけるようで、吹いてくる風は雪臭く、樹の枝から落ちる雪はサラッサラッとナンシーの頭にかかり、冷たい雫は遠慮なくその襟首に入りました。
『おお冷たい。』
と言って座り直したが今はナンシーは
『ああもう誰も助けに来てはくれないだろう。あの四人の人達も私のここに落ちていることは知らないだろう。』
と思うともう大声で泣くことも出来なくなりました。唇も舌もだんだん凍って来るような気がいたしました。その上もう遠くは見えないような気がしました。




 そのうちに少しづつ暖かになったようでだんだん眠くなってきました。ナンシーは
『もしここで眠ったら、もういつまでも覚めることはないだろう。』
とは思いましたが、ただうっとり気持ちがいいのでついそのままにウトウトと眠ってしまいました。
 あわれなナンシーは雪谷にとうとう眠ってしまいました。世界中にもう誰も助けに来る者もありません。今はただ死の手を待つ他はありません。その夢にはきっとお父さんやあの四人の道連れの事が浮かんで来る事でしょう。
 四人の旅人はナンシーと一緒に雪の捲風に覆われましたが、そこは大人の力でその危ない場合*15をきりぬけて、いろいろな困難には出合いましたが、それでも日の暮れには漸うのことで修道院に辿りつきました。
『あのナンシーはどうしたろう。』
『そうですね、私どもが危なかったものだからつい忘れていましたが、雪の中に埋まったままではありますまいかね。』
『それはまあ可哀そうな事をしましたね。』
等と話しながら炉のそばへ来ますと、さっきから一心にこちらの話に聞き入っていた猟師がありました。ふと何を思ったか前に膝を進めて
『もしもし一寸お伺い申しますが、そのナンシーと言うのはどうした子供ですか。』
と心ありげに問いかけますと、僧の方でもナンシーの父がこの修道院に来てるかも知れないと思ったので
『ハイその娘ですか、それはこの麓の家に居た娘ですがね、それの父が三日前に猟に出たきり帰らないので、その様子をさがしに行きたいと熱心に言ったものですから、私共が連れて来たかったのですがね。』
と一旦言葉を切って相手の様子を見ますと、その猟師は目を丸くして見るから気遣わしげな顔付きで一生懸命で聞いています。
『途中までは無事でしたが、山の中程で旋風に遭いましてね、私共みな一緒に雪の中に巻き込まれたんです。それで名々他の人を見ている間がなくて一生懸命にかけぬけ、その旋風からのがれて、暫らくしてから皆とも会う事が出来たのです。それからナンシーが居ないというので方々探して見ましたが何しろひどい雪で、愚図愚図していると私どもの命が危く*16なるので、仕方なしにそのままにして来ました。』
すると見る見る猟師は蒼くなって
『エッ!そのままにして。そ、そりゃひどい!ナンシーは私の子だ!は、早くその場所へ連れて行ってくれ。』
と勢いはげしく立上がりまして、ヒウヒウヒウと三回口笛を吹きますと、隅に居たたくましい大きな犬が大きな尾を振って駆けて来ました。この犬はカスパーといってアルプス山中の『雪の王』と言われる位に雪の中を駆けて獲物を探し出す事に妙を得た犬でした。ナンシーのお父さんが一番にこの犬を呼んだのは、雪に埋まったナンシーを探し出すには、この犬の力を借りる他ないと思ったからでした。
 ナンシーがその猟師の娘だと聞いて其処にいる人々は皆々
『それは気の毒だ。』
と思わぬものはありませんでしょた。元気のある若い人々は『私どもも加勢します、幸い今夜は月夜ですからすぐ出かけましょう。』
と七八人の人が一緒にその修道院を出かけました。カスパーは誰よりも先に嬉しそうに尾を振りながら駆けて行きます。
 ナンシーのお父さんはもう気狂のようになってどんどんかけ下りて行きました。道案内に来たさきの四人のうちの一人の僧は、中程に来るとふと止まって
『この辺です。私どもが旋風に会ったのは。』
と言うと一同その辺を手分けして一生懸命に探しました。カスパーは雪の中をドンドン掘ってあちらに行ったりこちらに行ったりして居ましたが、何か覚えの臭を嗅ぎつけたのか、何か確かなものをさがすような様子でだんだん下の方に下りて行きました。



  • 猟犬カスパーの手柄


 カスパーはだんだんと覚えの臭のあとをたどってとうとう谷の底まで来ました。そしてあちらこちらを探してフト雪に埋められたナンシーの身体をかぎつけました。するとカスパーはもう気が狂ったように両方の脚で雪を掻きのけて瞬く間にナンシーの体を雪の中から掘り出しました。始めは着物をくわえて右左に一生懸命打振りました。ちょうどそれが『目を覚ましてください、ナンシーさん、僕が来たんですよ、ここは雪の中じゃありませんか。』
と言う様でした。ナンシーはそれでも冷たくなったまま何の答えもありませんでした。カスパーは今度は着物を離して遥かに上の方を見あげて大きな声で吠え立てました。ちょうど
『おーい。見つけたよ。此処だよ!』
と言うように。
 上の方ではいくら探しても見出さないのですっかり困っていた所へ、谷間からカスパーの雄々しい吠え声が聞こえましたからソレ!と言うので、皆々危い所を滑り下りて犬の声のする所まで下りて来ました。
 お父さんは見るとナンシーが蒼くなって倒れて居るのですぐに両手で抱き上げて、持ってきたブランデーを少しのませ、皆と一緒に大急ぎで駆け上がりました。そして雪をわけながら修道院に帰りつきました。
 それからいろいろに介抱しているとやっとのことでナンシーの頬に少し赤みを帯びて来ました。人々は喜びの眼で見つめていると暫くして細い眼を見開き口のほとりにかすかな笑いが見えました。皆々大声で
『ナンシーよ、ナンシーよ。』
と呼ぶと漸々*17気が確かになって来ました。
 それから四五日その寺に居てナンシーは殆どもとの元気になり今度はお父さんとカスパーと連れだって麓の家に無事帰りつきました。



  • 結び


 その後はお父さんとナンシーとそれにカスパーも加えて幸福な月日を送りました。


 読んでみると、(小学生向きならこんなものかもしれませんが)なんともいいかげんなお話です。
 また、口語文体を直しているせいか妙に講談調というかなんというか。擬音のカタカナ繰り返しが多いのが印象に残ります。
 紙芝居かなんかにしてみると存外面白いかもしれません。



 といった所で今回はここまで。

余談1


 石川淳に同名短編「アルプスの少女」があります(戦後短篇小説再発見〈10〉表現の冒険 (講談社文芸文庫)に収録)が、こちらはハイジの続編と言うかオマージュの様な物で、ハイジを読んでいるのを前提に書かれている作品です。
 また、国会図書館等のOPAC検索では椋鳩十にも同名短編があるとなっていますが、「アルプスの女」が正しく、書誌情報が間違っています。(山窩小説で日本アルプスを題材にしたもの)


余談2


 この本、古書店で入手したものなのですが、最終ページにこのような札が貼られていました。
 


 これが何なのか判らなかったので、先日東京に行った折に直接神田神保町東京堂書店に赴いて尋ねてみたのですが、戦前のものだと言うのは確かだが詳細不明とのことでした。
 店のマークとして使われていたか、その時期は、なども不明との由。
 わかる方いらっしゃいませんかね。



当ブログの関連(?)記事




#ちなみにこの本ですが、自分が入手したものはあんまり状態が良くなかったんでラーメン一食分くらいのお手ごろ価格でした。

*1:Heidis Lehr und Wanderjahre

*2:Heidi kann brauchen, was es gelernt hat

*3:比較対照にしてる「若頭・残波」1巻はB6版

*4:soorce注:東京が「都」になったのは1943年

*5:はしがきに入ってる日付は大正九年三月三十一日

*6:当時の東京市内の学童作文集などを当たればいいのか?

*7:http://edo-ram.hp.infoseek.co.jp/teito/CoC_teito_price.htmlによるとビール大瓶が39銭、中級酒1升が1円70銭なので、1000倍強として

*8:こう書いてあるんですよ

*9:っても馬車に轢かれるんだが

*10:soorce注:これがどんな話か不明。犬の話?

*11:soorce注:尋常小学校のことなので、11〜12歳程度

*12:soorce注:大正時代ならキリスト教の牧師や神父は居たのではないか。坊さんとか僧って言い方はどうなの?

*13:soorce注:約18メートル。大人で30歩、子供なら40歩相当だろうか

*14:soorce注:手袋してないのか?

*15:soorce注:「ぢやうあひ」とのふりがな。

*16:soorce注:「あやふ」く とのふりがな。「やく」くじゃないよ!

*17:soorce注:ようよう、とのふりがな

*18:ハイジはランキング外