情報中毒者、あるいは活字中毒者、もしくは物語中毒者の弁明

情報中毒者、あるいは活字中毒者、もしくは物語中毒者の弁明


漫画、あるいは小説、もしくはエッセイなどの
印象、あるいは連想、もしくは感想を書いてるBlog。

冨樫義博もだけど、それ以外にも寡作だという誤解を受けてる漫画家って居るよなってことで、グラフ化して仕事量を比較してみた



 前回の記事がこちら。


 コメントなどで「○○と比べれば」「△△の方が」みたいな反応が結構あったので、何人か気になった作家のを調べてみました。
 今回も敬称略。


 まず「単行本だけで仕事量を測れない」ってのはもちろんわかってます。
 2014年9月現在、月当たりの仕事量がトップクラスに多い漫画家さんの例では、週刊1本+月刊3本の連載を持っていますが、ほぼ単行本にならないです。
 これは誰って、そう、「解体屋ゲン」の石井さだよし(Îˆä–Ÿ‰æH–[ƒIƒtƒBƒVƒƒƒ‹ƒTƒCƒg)。週刊漫画TIMES、ゴルフレッスンコミック、ゴルフコミック、近代漫画*1と、月産150P以上かな。*2


 あと、手塚治虫はちょっと無理でした。雑誌掲載時と全然違うのになってたり、同じ作品が改稿されて出されたり、全集と入り混じるとその年出た新刊がどれかとかまったくわからんのですよ。
 鉄腕アトムって全何巻なのか、って数え方さえわからんレベル(参考記事>やっぱり、最も多くの形態で出版された漫画は「鉄腕アトム」かもしれない・・・んだけどちょっと微妙という話)


 今回も、文庫版・完全版・豪華版などは含んでいません。



簡単な結論

  • やっぱり週刊でコンスタントにってのは超人だわ
  • 期待が強すぎるので、少しペースが遅くなると仕事してないとか思っちゃうだけ
    • 最初のペースが速いと余計にそう見えるのだろう
  • 本業が別にある*3場合は、そっちの仕事量が見えないとわからない


 グラフの縦軸は、累計単行本冊数。*4


 
 かなりいいペースで出してる冬目景。新装版とか完全版とかが出すぎてるので、新刊少ないと誤解されてるのだろう。画集含めると冊数はさらに増える。
 止まるのがあっても、他の作品に情熱が移って執筆が停滞する作品があるってだけで、決して「仕事してない」わけじゃあないんだよね。
 現在、グランドジャンプで「イエスタディをうたって」を月イチ連載してるけど、ダブルカラー扉の時は確実に載って減ページもないし*5
 イエスタデイをうたって 10 (ヤングジャンプコミックス)



 
 同じグランドジャンプで安定連載の弓月光と比較すると、ほぼ平行線というのがわかる。
 ほぼ隔週ペース並で仕事してるのだ。



 
 展覧会とかやってるのにペースほとんど落ちない井上雄彦。2008年の最後のマンガ展、今年のガウディ展などでは、流石に雑誌掲載は減ったけど。
 「リアル」が1年1冊コンスタントに出続けてるのも大きいか。
 スラムダンクの時には、年6冊出してたりして、集英社は人気作家に負荷かけすぎだろ、と思ったりも。
 バガボンド(37) (モーニング KC)



 
 今不定期連載になってる三浦健太郎の場合、結果として年2冊ペースだけど、最近に近づくと・・・。
 ギガントマキア (ジェッツコミックス)


 
 だんだん落ちて行ってるというのはこれまた弓月光との比較でみるとわかりやすい。
 あの書き込みだから仕方ないよなあ・・・。


 
 同じヤングアニマルで連載中の羽海野チカは、副読本とかがあるわりに、みたいなイメージなのかな。
 年1.5冊よりは多いので、自分のペースで仕事が出来るのがいいんじゃあないですかねえ。
 3月のライオン おさらい読本 初級編 (ジェッツコミックス)



 
 本職が別の場合は、こう、比較してはいけないのだと思う。


 
 拡大。
 宮崎駿の雑想ノート ファイブスター物語 (12) (ニュータイプ100%コミックス) 冒険エレキテ島(1) (KCデラックス アフタヌーン) 攻殻機動隊 (2)    KCデラックス


 宮崎駿はもちろん映画監督だし、永野護はデザイナー・アニメーターだし、鶴田謙二イラストレーターでしょ。
 永野護だって、画集とかデザイン集とかそういうのの量や「ゴティックメード」の作画枚数とか考えたら凄い仕事量なので、単行本の数だけで比較しようってのが間違いなのかもなあ*6
 士郎正宗は・・・ほら、イラスト仕事とか、映画関連とか、ほら、あれよ、そういうやつ。


 
 これは作るべきでなかったかなあ、な萩原一至。いや、でも、バスタード以外に浮気してるわけじゃあないしさ。
 どこにどう拘るかっていうのがね。三浦健太郎もだけど、その時間に見合うものを出したいというのがあるのだろうし。
 BASTARD!!-暗黒の破壊神-(27)(ジャンプコミックス)



 
 諸星大二郎は何故寡作だと思われてるのかが理解できぬ。ので最初からの累積にしてみた。
 西遊妖猿伝はもう20巻超えてるんだぜ。(数え方としては、双葉社で9、潮で7、講談社で5としてます)
 夢見村にて 妖怪ハンター 稗田の生徒たち (1) (ヤングジャンプコミックス)



 
 コンスタントに週刊で続けてる尾田栄一郎。週刊を続けることの凄さ。
 REDとか画集とかは入れないでこのペース。
 休載がニュースになるくらいで、病気療養のため少し落としましたがそれでもやっぱり。
 映画や画集関連の合わせるとさらに仕事してるんだよなあ。やっぱ集英社は人気作家を酷使しすぎだ。
 ONE PIECE 75 (ジャンプコミックス)



 
 しかし、その尾田栄一郎立原あゆみと比較するとこうなるのでした。
 YTS!(やっぱり立原あゆみはすげえや!)
 仁義零 5 (ヤングチャンピオンコミックス)



 
 ・・・ひょっとして、本当に読者が見たかった図、というのはこういうのか?



 締め切りの無い仕事はやりづらい、かといって無理な締切では結局できない。
 自分のペースと雑誌のペースが一致するとも限らない。
 「連載」システムとの相性ってのもあるだろうけど、そうそう変えられるもんじゃあない。



 でも、その作者・作品を載せるかどうかってのは結局編集部、いやさ編集長が判断するものなので、実力を認めさせた上で、さらに望まれてでないと自由は求められないし、うーん。
 ジャンプも電子配信が始まったし、既に名が売れていて読者を掴めている漫画家さんは自分のペースで仕事をしやすくなる時代が来たのかな。
 でもそれは、新人には辛い時代とも言えそうだし。


 あしたはどっちだ。


 といった所で今回はここまで。

今回の使用データ(グラフにしてない漫画家も)

年次,冨樫義博,弓月光,立原あゆみ,三浦健太郎,冬目景,萩原一至,尾田栄一郎,岩明均,平野耕太,井上雄彦,羽海野チカ,士郎正宗,諸星大二郎,鶴田謙二,宮崎駿,永野護
1972,,,,,,,,,,,,,,,,
1973,,,,,,,,,,,,,,,,
1974,,,,,,,,,,,,,,,,
1975,,,,,,,,,,,,,,,,
1976,,,,,,,,,,,,,,,,
1977,,,,,,,,,,,,,1,,,
1978,,,,,,,,,,,,,5,,,
1979,,,,,,,,,,,,,7,,,
1980,,,,,,,,,,,,,8,,,
1981,,,,,,,,,,,,,10,,,
1982,,,,,,,,,,,,,11,,0,
1983,,,,,,,,,,,,,11,,3,
1984,,,,,,,,,,,,0,15,,4,
1985,,,,,,,,,,,,3,17,,4,
1986,,,,,,,,1,,,,5,18,,4,0
1987,,,,,,,,2,,,,6,19,,5,2
1988,,,,,,2,,4,,,,6,22,1,5,3
1989,0,4,14,1,,7,,4,,1,,7,25,1,5,3
1990,4,7,26,3,,9,,6,,2,,7,25,1,5,4
1991,8,9,39,5,,10,,8,,8,,9,27,1,6,5
1992,13,11,49,7,,12,,10,,12,,9,28,1,7,6
1993,19,13,61,9,,14,,12,,18,,9,31,1,8,6
1994,23,15,73,11,,15,,14,,24,,9,33,1,8,7
1995,23,17,83,13,2,16,,15,1,28,,10,34,1,9,8
1996,25,18,94,15,4,18,,15,2,33,,10,35,1,9,8
1997,26,20,103,17,6,18,1,16,2,35,,10,37,3,9,9
1998,29,22,115,19,8,20,7,18,4,37,,10,40,4,9,10
1999,33,24,124,21,11,21,12,19,6,41,,10,45,4,9,10
2000,36,25,134,23,13,21,17,19,7,45,,10,48,4,9,11
2001,39,27,142,25,14,22,22,20,8,50,1,11,50,5,9,11
2002,41,29,151,27,16,22,27,21,8,54,3,11,50,6,9,11
2003,44,31,159,29,18,22,32,21,10,58,6,11,51,6,9,12
2004,46,32,167,30,20,23,36,23,11,61,7,11,53,6,9,12
2005,48,34,175,32,22,23,41,24,11,63,9,11,55,6,9,12
2006,49,36,183,34,23,24,45,24,12,67,11,11,57,6,9,13
2007,50,38,192,35,26,24,49,25,13,71,11,11,60,6,9,13
2008,52,41,201,36,28,25,53,25,13,74,13,11,63,7,9,13
2009,53,43,210,37,32,26,57,26,15,77,14,11,64,7,9,13
2010,53,46,216,38,34,26,61,27,16,80,16,11,67,8,9,13
2011,55,47,220,39,35,26,65,28,17,81,18,11,68,9,9,13
2012,58,50,224,39,37,27,69,28,17,83,20,11,69,10,9,13
2013,58,51,229,40,39,27,73,29,18,85,21,11,70,11,9,13
2014,58,53,232,41,41,27,76,29,18,85,21,,72,11,9,13



*1:ネット配信のみ

*2:単行本換算だと年10〜11冊ペース

*3:アニメーター、デザイナー、イラストレーターなど

*4:弓月光立原あゆみは1989年を起点にした数でそれ以前は含んでいない

*5:カラーが1枚の時はページ数減る

*6:記事の趣旨を全否定

読んだ本

  1. 隔週ヤングチャンピオン
  2. 隔週イブニング
  • ヤンチャン
    • 今時だと、特攻服で遊園地はなんかのコスプレ撮影だと判断して入場断られるかもしれない。九州だと普段着だから大丈夫かな?>デメキン@佐田正樹×ゆうはじめ。
    • 尖った木に刺さって負けるってのは、どおくまん「熱笑!花沢高校」へのオマージュかな。>クズ!!〜アナザークローズ九頭神竜男〜@鈴木大。
    • 仮面軍持ってる情報が微妙に古いのは、そこに自分が含まれていない不自然さを隠すためかもしれんな>神アプリ@栗原正尚
    • 特別読切。休刊したプレイコミックで連載されていた独身サラリーマンちょい足し系グルメ漫画が、コンビニ版の宣伝のために登場。「使える」レシピがかなり多いのでオススメです>めしバカ @ロドリゲス井之介
    • 敵の敵は味方って事で、人間皆殺し戦線を結成すればいいのになあ。そういう判断が出来ない程に壊れた存在だともとれるが>スイッチウィッチ@茂木清香
    • 相手の話を聞くのは、最低脚一本折って動けなくしてからってのが鉄則だろうに>OUT@井口達也×みずたまこと。
    • こういう勘違い熱血は、本当の芸能関係だとケツモチのヤクザに沈められて終わりでしょうねえ>純愛ジャンキー@葉月京
    • この人形は!こういう原作ネタが入ってくるのが嬉しいよね>ヤング ブラック・ジャック@手塚治虫×田畑由秋×大熊ゆうご
    • ヤクザの世界も、結局政治なんだなあ、と。戦う前に決着はついている>仁義 零 -JINGI ZERO-@立原あゆみ
    • その能力は衰えず、どころかさらに磨きがかかってるな。しかも、自分は命も金も賭けてないもんなあ>凍牌〜人柱篇〜@志名坂高次
    • 結局、どいつもこいつも自分の事だけしかないからこうして喰いあいになるのか。うーん。>荒くれKNIGHT 黒い残響完結編@吉田聡
  • イブニング
    • 本当の顔と名前で交わる事の無い姉妹。いや、重なってるだけで繋がってはいないのか>累 -かさね-@松浦だるま
    • 最終回。前作のとろ鉄と全く違ったコンセプト、最初から終わりが判ってる形、と幾分実験的でありながら綺麗にまとめ上げた。お疲れさまでした>満月エンドロール@野村宗弘
    • 黒魔法だけじゃなくて白魔法も使えるのか。同じであろう力をどう使うかって対比ですねえ>いぬやしき@奥浩哉
    • 最終回。あれ、監査の実行とその結果は描かないまま、と思ったら「週刊朝日」に移籍とのこと。イブニングは、入りも出も、出版社またいでの移籍多いねえ。>ヘルプマン!@くさか里樹
    • 新人キャラ投入。犬がいることは説明しておこうぜ。>いとしのムーコ@みずしな孝之
    • 汁がたまるのって、実際どうしてるんだろう。拭いたうえでケースの中に乾燥剤つめたりするんだろうか>たんさんすいぶ@上条明峰
    • 精霊的なものがいいのか悪いのかてのは、受け取る側の資質でかわりそうなもんでもあるが、さて>エシカルンテ@森和美。
    • 与えられた情報といい、そんな筈ないのに出し抜けたり、いいように利用されてるとしか思えんな。>DEATHTOPIA -デストピア-@山田恵庸
    • まさかこれ殺人が発覚してジエンドって終わり方は無いよな?>湯けむり球児@森高夕次×木下由一。
    • 就労ビザの話は、これ日本に来てる中国やフィリピンの人と重ねると、物凄い皮肉だよなあ、としか思えないんだが、作者の意図がどの辺かわからんのよね>将太の寿司2 World Stage@寺沢大介
    • なんつーか、空気の読めなさというか仲間意識の薄さとか、どうしてあの両親に育てられてこうなるんだろう、って疑問はある>のりりん@鬼頭莫宏
    • でもこれ、救急読んでも警察読んでも、何をどう説明するんだ>軍鶏@たなか亜希夫
    • おじいちゃんとの思い出話。海とのいい出会い方をしたんだな、とちょい感動>山賊ダイアリー@岡本健太郎