情報中毒者、あるいは活字中毒者、もしくは物語中毒者の弁明

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漫画、あるいは小説、もしくはエッセイなどの
印象、あるいは連想、もしくは感想を書いてるBlog。

2010年現在の週刊漫画雑誌、全11誌の傾向と対策



 世界中の雑誌や印刷物を見渡してみるに、漫画雑誌、それも週刊の漫画雑誌がこれほど多く発行されているのは日本のみ。*1
 その歴史も約40年しかありません。(ゴラクとかマガジンとか、創刊50年超えてるじゃねーか!と思われるかも知れませんが、1960年代終盤までは「漫画と読み物」の雑誌だったのです)



 先日コミックバンチが休刊したことで、現在発行中の週刊漫画雑誌は全部で11誌。これは、1988年以来の低い数字です。


 参考記事→1970年代からの漫画雑誌・コミックスの数の変化と、販売額の変化から見えてくるもの


 で、どんな雑誌があるかなんとなく知ってても、全部ちゃんとは知らないって方も結構多いかもしれません。
 ということで、現在発行中の週刊漫画雑誌に関してまとめてみました。


 


 上段:少年誌、中段:ヤング誌、下段:オヤジ雑誌です。


現在発行中の週刊漫画雑誌


 出版社別に以下の11誌。
 出版社で見ると、講談社が3誌で最多。一ツ橋グループ集英社小学館が2誌づつ、それ以外が1誌づつ。
 下は各雑誌のHPへのリンク

 2010年現在の発行部数順*2に並べると、

  1. 週刊少年ジャンプ(2,809,362部)
  2. 週刊少年マガジン(1,650,205部)
  3. ヤングマガジン(857,013部)
  4. ヤングジャンプ(852,938部)
  5. 週刊少年サンデー(773,062部)
  6. 週刊少年チャンピオン(500,000部)(※公称部数)
  7. 週刊漫画ゴラク(500,000部)(※公称部数)
  8. モーニング(364,398部)
  9. ビッグコミックスピリッツ(303,917部)
  10. 週刊漫画サンデー(300,000部)(※公称部数)
  11. 週刊漫画TIMES(※公称部数発表せず)

 という順。
 週刊漫画TIMESを300,000部とすると、1週間当たり9,210,895部、900万部超発行されていると言うことになります。


 どの雑誌も、最盛期に比べると部数を落としていますが、各出版社において最大の発行冊数*3の雑誌であることは間違いありません。


 創刊が最も早いのは週刊漫画TIMES(1956年)で、一番遅いのはモーニング(1982年)ですね。


長期連載


 全ての雑誌に、10年以上前から続いている作品(シリーズ作品も含む)が存在しています。
 長期連載になる=人気があると言うことが出来ると思いますし、終わらせたくないのだろうなという場合もままありますが、「あの作品が載ってる雑誌」という説明をする時には便利。



 ストーリー漫画の場合、大体連載10年で50巻を超えます。
 100巻を超えているのは

 こちら葛飾区亀有公園前派出所 171 (ジャンプコミックス) クッキングパパ(111) (モーニングKC) ミナミの帝王 106 (ニチブンコミックス) 美味しんぼ 104 食と環境問題 (ビッグコミックス) 


 シリーズ累計だと、ドカベン (1) (少年チャンピオン・コミックス) グラップラー刃牙 (1) (少年チャンピオン・コミックス)*9も超えてるのかな。



 巻数と掲載率がほぼ比例するので、長期休載があったり隔週連載だったりシリーズ連載だったりすると10年でも30巻行かなかったり。
 ギャグの場合は続いてるのに単行本自体出なくなったりね・・・。


 最初から読み続けてる人はどの位の割合なんでしょうな。


発売日と定価


 月・木が3誌づつ、水・金が2誌づつ、火が1誌。
 定価は240円〜320円まで。同じ雑誌でも週によって10〜20円変動するので、目安程度。


発売日誌名定価
月曜日週刊少年ジャンプ240円
ヤングマガジン320円
ビッグコミックスピリッツ310円
火曜日週刊漫画サンデー300円
水曜日週刊少年マガジン260円
週刊少年サンデー260円
木曜日週刊少年チャンピオン260円
ヤングジャンプ320円
モーニング320円
金曜日週刊漫画ゴラク320円
週刊漫画TIMES300円


 全部買うと、一週間で3,210円、一ヶ月で13,000円弱、一年だと155,000円くらい。
 そんな高くもないか。


 また、あくまでも公式発売日なので、流通の関係上、早くなる地域と遅くなる地域が存在しています。
 例えば、週刊漫画ゴラクは関西一部地域では木曜日発売。通称「関西木曜会」と呼び習わされ、「関東金曜一家」と抗争中。



 と、ここまでは事実。

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 ここからは結構偏見入ります。

おおまかな分類と位置づけ


 対象年齢別で、大まかに3つに分けることができます。
 また、各雑誌の表紙を考えると、「漫画」「グラビア」「漫画・グラビア混合」「イラスト」に分類することができます。
 購買ターゲットとグラビア表紙の関連は、隔週・月刊の中綴じ雑誌でも顕著で、グラビアに登場するタレントや露出度も含め、かなりわかりやすい傾向が見られるかと思います。


種別誌名表紙
少年誌週刊少年ジャンプ漫画
週刊少年マガジングラビア・漫画
週刊少年サンデーグラビア・漫画
週刊少年チャンピオングラビア・漫画
ヤング誌ヤングマガジングラビア
ヤングジャンプグラビア・時々漫画
モーニング漫画
ビッグコミックスピリッツグラビア・漫画
オヤジ誌週刊漫画ゴラク漫画
週刊漫画サンデー漫画
週刊漫画TIMESイラスト


 表紙の傾向で並べるとこんな感じ。

 

 上ほどグラビアが多くて、1段目はヤンマガヤンジャン、マガジンの順、2段目は混合、3段目はほぼ漫画作品から、最下段は、漫画からだけど特殊デザインのモーニングと、イラストの週漫。


 これは私の勝手な分類ですが、縦軸に年齢、横軸に「ライト・マニア」軸をとった図で示すと、


 


 こんな感じになるんじゃあないかと。
 
 



 もちろん、雑誌内でも作品毎に差があるので(ヤングマガジンの「みなみけ」とかね)、全体としてのイメージ。
 あと、これは週刊漫画雑誌に限ってるので、漫画雑誌全体で言えば真ん中に近い所に集中しています。


 また、上はあくまで位置づけイメージの話で、部数を考慮してません。
 部数や知名度にすると、(例として3誌を取り上げてみると)こんな感じにサイズ差があり、重なり合いつつ競争してるんだと思います。

 



メディアミックスなど


 アニメ、ドラマCD、トレーディングカード、TOY、実写ドラマ化、実写映画化、Vシネマ、小説・エッセイ・映画等の既存作品コミカライズ等等、様々なメディアミックスがあります。
 これに関しては、雑誌というより出版社による差ってのもあるかも。
 あと、ゲームはアニメに付随してって場合が多いのでまた別か。
 パチンコは把握し切れません。


 ここ5年位の、アニメ系、実写系の2軸から多寡を図にするとこんな感じ?
 右上ほど多い。


 



 少年誌はやはりアニメ・ドラマCDなどが多い、マガジンは比較的実写関連メディアミックスが多い印象。ジャンプの実写はこち亀くらいで、あとはアニメか。


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 サンデー・チャンピオンから実写は・・・「クローズZERO」は漫画原作映画のコミカライズなので一応実写系か。台湾で「ハヤテのごとく!」、国内だとショート枠で「24のひとみ」が実写化されたりってのはあるけど、やっぱり少ないよね。


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 ヤング誌は、伝統的にアニメよりも実写が多いと思う。古くは・・・東京ラブストーリーとかかな。
 スピリッツは今度ウシジマくんがドラマんなるし、ヤンマガはチェリーナイツ、ヤンジャンハチワンダイバー、モーニングは昆虫探偵ヨシダヨシミ、等等。


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 また、アニメになるにしても深夜枠ですね。最近だと、ショート作品のアニメが多いイメージ。
 チーズ、みなみけB型H系とか。ここ数年でスピリッツからアニメになったのって、「伝染るんです」以外にあったっけ?ギャラリーフェイクももう5年前か。


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 オヤジ雑誌は、まずアニメにはなりません。実写ドラマ、それかVシネマ
 例外としてゴラクの「銀牙伝説WEED」くらい。でもあれはジャンプからの2代目作品なんでちょっと違うか。
 また、「映画化」という時でも独立単館上映のみの、実質Vシネマって場合が多い。


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 メディアミックス方向として、アニメ・小説・映画など、原作が先にあるコミカライズも。
 オリンピックやワールドカップなど、大規模スポーツイベントがあると、実在スポーツ選手漫画ってのもありますね。


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単行本


 連載された作品が単行本になるかどうか。
 週刊連載では、アシスタントを雇ったり、仕事場を借りたり、雑誌連載だけでは赤字、という話があります。
 ところが、雑誌によっては、単行本の刊行が途中で止まったり、そもそも出なかったりという場合も。


 少年誌は出る、青年誌は大体出る、オヤジ雑誌は雑誌によりけり、といった所か。
 部数も、史上最高である初版300万部オーバーから数千部くらいのまで幅が随分あります。


 オヤジ雑誌の場合、いきなりコンビニコミックってパターンもありますが・・・。

 こんなんコミックごくうま! がっつり&さっぱりグルメ編 (マンサンQコミックス) B級グルメ食堂スペシャル 人気メニュー編 (Gコミックス) 特選恋愛ファイル 5 裏 職場恋愛(芳文社マイパルコミックス)

休載とか

 「バクマン。」では、休載しちゃいけない!とかいっとりますが、週刊連載ってのは超人的な能力を必要とする仕事なんで、実際休載なしで出来るのは本当に限られた漫画家さんだけだと思います。
 取材で一ヶ月休載くらい許していいと思うんですけどね。


 今、日本にプロの漫画家さんってのは1万2千人以上*10居ると考えられるのですが、週刊漫画雑誌での連載を行っているのはそのうち500人弱(シリーズ連載などを含む)でしかありません。*11
 各種スポーツにおけるオリンピック出場選手レベルかそれ以上なのかなー、とも。



 少年誌だと、ジャンプは冨樫義博の長期休載が話題に上るのと、今回の尾田栄一郎の一ヶ月休載とかありますが、どの作家さんも頑張り過ぎではないか。とはいえ、ジャンプの場合は掛け持ち連載がほぼあり得ないのでそれも仕方ないのか。
 マガジンはもう少し緩く、ローテーション休載によって負荷を減らしてますね。
 サンデーは休載率低め・・・かなあ。チャンピオンは作家さんによって差がありますが、休載は少な目のイメージ。車田先生はどういう感じかわかりませんが。


 青年誌では、そもそも全ての作品が「毎号連載」という名目の雑誌すら存在しません。
 隔週・シリーズ連載がメイン・・・いや、スピリッツなんかは毎号連載が数えるほどしか存在しませんし。
 つーかですね、スピリッツなんかはビッグネームを持ってくることにかまけすぎて、自身が週刊雑誌だってこと忘れてるんじゃあないでしょうか。
 浅野いにおが週刊連載毎号掲載!とか打ったけど、実質2ヶ月で終わり。それは無理が過ぎますよ。原付スクーターに時速250Kmで走らせるってくらいありえない。だいたい、締め切りとかそういう概念そのものが・・・いや、これはいいや。


 単行本1冊分掲載→準備期間→単行本発売と同時に新シリーズ開始、みたいな方法を取る作品もあり、読者もそういうのに慣れちゃってる上にそういう作家さんのファンは単行本派が多い、みたいなのもあるかもしれません。
 毎週雑誌を律儀に買うのはカモだとでも思ってるんじゃあなかろうなあ・・・。



 オヤジ誌だと超長編というのがそもそも少なくて*12、長期連載でも1話〜単行本1冊か2冊に収まるミニシリーズの集合みたいな作り方をするのが多く、それ以外でも、読切シリーズ・短期集中連載として掲載されるのも多いので、休載しているというより今号は載っていないだけ、という作品が非常に多い。
 故に、連続して読んで無くても大体話がわかるし、隔週や偶に載るシリーズリバースエッジ大川端探偵社 1巻 (ニチブンコミックス) 湯けむりスナイパー VOLUME1 (マンサンコミックス)でもアリなんですかね。
 

生え抜き作家と移籍の話


 ある雑誌・出版社だけで仕事をし続ける漫画家さんというか、そこからデビューしてきて仕事をし続ける方を「生え抜き」って言い方を(私は)してます。


 デビューへの契機として、投稿型の新人賞、持込、スカウトなど色々ありますが、他誌での連載を経てから、ってので結構違うものじゃあないかと。
 漫画家さんとしてのキャリアにもよるかも知れません。


 少年誌は、新人募集に意欲的。
 ですが、増刊号や別冊的な月刊誌の在り方を考えると複雑です。
 ジャンプは新人賞への募集が最も多いだけあり、増刊や本誌での新人作品掲載が結構あります。
 マガジンは、マガジンSPECIAL、合併号休み時の増刊(ドラゴンとか)もあり、新人が掲載される機会が結構多いかなと。
 サンデーは、少し前まで新人発掘に消極的な感じがありました。増刊の「サンデー超」が隔月、増刊は無く、本誌に新人作品がほとんど掲載されない。ところが、現在はWEBのクラブサンデー、月刊に戻ったサンデー超、ゲッサンと、新人発掘に意欲的。
 チャンピオンの場合、いきなり本誌に短期集中連載・シリーズ連載と銘打って掲載、評判が良いとそのまま長期連載へ、というある種柔軟な方針。
 賞への投稿、持ち込み、アシスタントさんみたいな紹介から、とルートは様々ですし、いい循環なのかなーとも。



 青年誌の場合、同出版社の少年誌で執筆してた作家さんや、他社から移籍って場合が多いかな。
 これは、読者の方が移動してくることからそうなったのか、作者が移ったから読者もなのか、因果関係的に不明。
 例えば、純粋なヤンジャンデビュー作家ってどのくらい居るんだろう。ふなつ一輝がそうか。
 ただ、新人募集を常にやってる、ヤンマガ・モーニングなんかはちばてつや賞出身でデビュー作掲載、なんてありますね。
 そのまま連載モーニングでやってる作家さんは結構少ないかもしれませんが。


 オヤジ雑誌の場合、そもそも新人賞的なものがあんま無く(マンサンだけ?)、デビューする場って雰囲気じゃなかったりします。
 ただ、それ故に(!?)作家さんを引っ張ってくるのはフリーダム。最近の週漫は色々すごいかも。(関連記事→週刊漫画TIMESの現状の確認の為にヒロイン集合画像作ってみた。)



 とまあ、大体こんな感じ。
 間違いや誤解も多いかもしれないので、なんか機会がありましたら雑誌を読んでみてください。


 と言ったところで今回はここまで。


*1:海外にも多少はあるが、日本の漫画雑誌の現地訳版が多い

*2:参考:一般社団法人 日本雑誌協会

*3:小学館の場合、発行部数が最も多いのはコロコロコミックだが、週刊はその4倍の回数発行される

*4:休載考えなければ、ですが

*5:中断あるけど

*6:は、まあ一応

*7:ネクスターで始まったのが1996年

*8:現在はシリーズ連載

*9:SAGA、ピクル、疵面含めると

*10:soorce独自試算による数値。商業誌だけで月20万ページ超の漫画が描かれていることなどからの計算。多分これより多いって意味で信頼度低。

*11:新聞漫画、週刊雑誌での漫画掲載、隔週2本など、締切の数で言えば週刊以上の仕事をしてる人を含めても700人は超えないはず

*12:静かなるドン、銀河伝説WEEDオリオンくらいか?