情報中毒者、あるいは活字中毒者、もしくは物語中毒者の弁明

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漫画、あるいは小説、もしくはエッセイなどの
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2011年のライトノベル市場は274億円。販売部数は約5000万冊で、文庫本の4.3冊に1冊はラノベだった。




 いまや文庫本マーケットの2割以上を占めるライトノベル
 2011年のライトノベル市場は274億円と推定され、まだまだ伸びしろのある成長市場だ。

出版月報2012年3月号「2011年文庫マーケットレポート」より

 


 そして、2011年の文庫本販売シェアにおけるライトノベルが占める割合は、全体の23.5%。
 4.3冊に1冊はライトノベルだった、といって差し支えないかと思います。


 グラフで見ると、この位。
 



 販売部数で言うと、文庫全体の推定販売部数が2億1,229万部なので、ライトノベルだけで約5,000万部*1ということになります。



 ということで、データは、出版月報2012年3月号の特集「2011年文庫マーケットレポート」から。


文庫本ジャンル別販売シェア


 取次POSデータ(冊数ベース)からの販売シェアは、2010年、2011年で下記の様に変化。


種別20102011
一般文庫66.965.6
ライトノベル(男)13.616.2
雑学文庫98
ライトノベル(女)7.47.3
官能文庫1.41.4
学術・教養10.9
その他0.60.6



 文庫全体での推定販売額が1,319億円というデータも同時にあり(後述)、販売冊数パーセンテージからすると冒頭の274億円というのは、低い数値にも思えます。
 が、ライトノベルは比較的単価が安いこともあり、こうなっているのでしょう。


 冒頭でも書きましたが、男女合計で23.5%。ほぼ、4.3冊に1冊はライトノベルであった、と言っていいでしょう。


 ただし、この分類における「ライトノベル(男)」と「ライトノベル(女)」がどういう基準なのかは書かれていないんですよね。
 BLも(女)に含んでるのか、それとも官能小説に行ってるのか。


売れ筋作品

 文庫での売れ行き好調書としてTOP50が挙げられていた中で、ラノベ系の作品は以下のとおり


順位タイトル作者
11涼宮ハルヒの驚愕谷川流
14新約 とある魔術の禁書目録鎌池和馬
18バカとテストと召喚獣井上堅二
19俺の妹がこんなに可愛いわけがない伏見つかさ
24ビブリア古書堂の事件手帖三上延
28僕は友達が少ない平坂読
40IS<インフィニット・ストラトス弓弦イヅル
42シアター!有川浩


 角川系・アニメ化作品が強いですね。


 新約 とある魔術の禁書目録(インデックス)〈4〉 (電撃文庫) バカとテストと召喚獣10 (ファミ通文庫) ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち (メディアワークス文庫) 


 参考までに、作者として最多ランクインはもちろん東野圭吾
 また、「図書館戦争」シリーズはどう扱うべきか、正しいライトノベル読者ではない私には判らないので入れていません(レーベルで分類されてるっぽいので)。
 15位が「図書館戦争シリーズ」、26位が「別冊図書館戦争シリーズ」となってました。



 それ言ったらシアター! (メディアワークス文庫)もどっちだろうな。メディアワークスJならラノベだけど、メディアワークス文庫だと違う?
 まあいいか。


特記事項など


 その他、ライトノベル関連で書かれていたことは


 『涼宮ハルヒの驚愕 初回限定版』は買切り扱いで51万部刊行され、ほぼ消化。


 涼宮ハルヒの驚愕 初回限定版(64ページオールカラー特製小冊子付き) (角川スニーカー文庫)


 上下セットで100万部を初版で売り切る文庫ってそうは無い、っていうかねーよ。


 書下ろしが多い、ってよりも発表する(雑誌)媒体が無い状況で刊行点数が増えてるってのが正しい気もします。
 小説含め、の文庫オリジナルは昔から結構あるとは思うんですが、比率び問題なのかしら。

  • TVアニメ化によって大きく部数を伸ばすのがライトノベル
    • はがない、とある魔術は初版30万部レベル
    • アニメが終わっても、バカテス、ISなどは初版30万部台の高水準


 一度付いた読者が続刊も買う、ということなのかな。
 面白い作品であるという認知が広まる効果といっていいのでしょう。


 上の売れ行き好調書の中でアニメ続編が発表されてるのは俺の妹がこんなに可愛いわけがない 9 (電撃文庫 ふ 8-14)ですか。ISはちょっとよくわかんないことになってるみたいだし。


  • 懸念材料
    • メガヒット作品に読者の関心が集中することにより売れ行きが二極化。
    • 新シリーズに大ヒット作品が生まれにくくなっている


 この辺は、いずこも同じ、ですかね。
 漫画も長編作品が多いし、時代劇文庫も居眠り磐音とかえらいことになってるし。

  • ライトノベルの軌跡
    • 元々マニア向けで書店の片隅に
    • (単にキャラで萌えさせれば、は駄目で)読者と共犯関係を結び合うような繊細さが必要で“売らんかな”では通用しない
    • ラノベの売り上げが伸びる書店には、必ずと言っていいほどラノベ好きな書店員が居る


 単に萌えだけのっけりゃええんやろ、って、売れてる作品には実は殆ど無いんじゃあないか、ということですね。
 これはライトノベルに限ったことではないと思うのですが、推す書店員さんの力って大事だと思います。



創刊レーベル


 創刊された文庫は21レーベル291点。
 新規レーベルは、講談社ラノベ文庫三笠書房f-Clan文庫などのライトノベル系、集英社ピンキー文庫はケータイ小説系。


 文庫レーベルに含まれない新書サイズでも、所謂ラノベ的な作品を出版するものが立ち上げられていたり、多く出版されていますのでそういうの考えると「ライトノベル市場」的にはもう少し大きいのかな。
 区切りが難しいけど。


 ログ・ホライズン1 異世界のはじまりとかね。


余談 文庫本全体での状況


 1997年〜2011年までの、新刊点数、推定出回り部数(万部)、推定販売部数(万部)、推定販売金額(億円)、返品率 %は以下の様になっていました。


年度新刊点数推定出回り部数(万部)推定販売部数(万部)推定販売金額(億円)返品率 %
19975,05741,38125,1591,35939.2
19985,33742,02524,7111,36941.2
19995,46141,78223,6491,35543.4
20006,09540,92823,1651,32743.4
20016,24137,87822,0451,27041.8
20026,11536,89721,9911,29340.4
20036,37336,36621,7111,28140.3
20046,74136,46722,1351,31339.3
20056,77637,18622,2001,33940.3
20067,02539,07823,7981,41639.1
20077,32038,19722,7271,37140.5
20087,80938,45322,3411,35941.9
20098,14337,37521,5591,32242.3
20107,86935,35021,2101,30940.0
20118,01033,96821,2291,31937.5


 2010年よりも返品率が下がったことにより、販売部数・販売金額は微増しているものの、ここ10数年でのピークである2006年から100億円ほどダウン。
 ライトノベル市場の伸びだけではカバーし切れていない、といった所でしょうか。


 景気の良し悪しよりも、団塊世代の退職による電車通勤などの人数減少、携帯電話やゲーム機による余暇時間の取り合い、と色々な要素によるものだとは思われますが、今後爆発的に増加するとも思えませんしねえ・・・。


 といった所で今回はここまで。

*1:より正確には4,988.8万部だが、誤差の範囲だろう