情報中毒者、あるいは活字中毒者、もしくは物語中毒者の弁明

情報中毒者、あるいは活字中毒者、もしくは物語中毒者の弁明


漫画、あるいは小説、もしくはエッセイなどの
印象、あるいは連想、もしくは感想を書いてるBlog。

「エコトピア・レポート」(1972年)に書かれてたオンデマンド出版など



 


 通俗的な本は普通に印刷され、キヨスクや書店で売られているが、専門的な書物は特定電送網を通じて入手しなければならない。
 カタログで本のナンバーを調べ、ジューク・ボックスのようなキイ・ボードのナンバーをパンチし、ビデオスクリーンに出てくる推薦広告、本文のサンプル、価格などをしらべ、購入の希望があれば適宜コインをほうりこむ。
 数分してその本のプリントアウトがスロットにあらわれる。
 こういう端末機は都市居住者にはあまり使われていないという。彼らはもっと読みやすい本がいいのだろう。
 だが端末は国の隅々にまで備えつけられており、地方の住民が、ベストセラーの通俗本や専門書を入手するために使われている。

 アーネスト・カレンバック「エコトピア・レポート」創元推理文庫版(1981年初版) P177〜178より。


 今読むと、これに夢物語として書いてある事の中で実現されてるのがあったり、全然違う方向に行ってるのがあったりとなかなか面白い。
 「紙に印刷する」という発想が当時的というかですが、仕組みとしてはもう既にこれ実現可能だったりしますからねえ。




 この作品は、アメリカ合衆国の西部海岸地域の州が分離独立し、新国家「エコトピア」を建国した、という設定から始まります。
 訳者あとがきによると、1972年の時点で「エコロジー・テーマはもう古い」と25もの出版社に原稿を突き返されたけど、自費出版で三万二千部売れたことでペーパーバック化、全アメリカで大ヒットしたとか。


 国の名前から分かるように、エコロジーを国是とした理想国なんですが

  • 生分解プラスチック
  • ゴミの分別収集
  • 火力や水力や原子力に頼らない発電

 などなど、当時現実化されていなくても、今では結構具現化されてるものが出てきたり。


 あと、エコトピア内の研究所の話では、なんというかGoogleとかっぽいなあ、と。


 研究施設の雰囲気は、彼らが担っている国家的な大きな責任を考えると、驚くほどくだけたものだ。
 しじゅう集まってはコーヒーや紅茶を飲んだり、マリファナを吸ったりしているし、研究課題に子供の建築セットの材料を使ったりする。
 多くの研究所にある電子装置は各種のゲームに供せられる。
 こうしたある程度の時間つぶしが、画期的な、有益なアイディアを引きだすのに役立つのだそうだ。

 同、P203〜204より。



 現在は「緑の国エコトピア―エコトピア国の出現〈上巻〉」「緑の国エコトピア-エコトピア・レポート 下巻」として、これの前日譚(建国噺)との上下本が出ています。


緑の国エコトピア―エコトピア国の出現〈上巻〉 緑の国エコトピア-エコトピア・レポート 下巻


 いかにも冷戦時代に書かれた理想未来小説なのが面白いのですが、本物エコ志向の人がこれ読んだらどう思うんでしょうねえ。
 今読むとユーモア小説に近いからなあ。