情報中毒者、あるいは活字中毒者、もしくは物語中毒者の弁明

情報中毒者、あるいは活字中毒者、もしくは物語中毒者の弁明


漫画、あるいは小説、もしくはエッセイなどの
印象、あるいは連想、もしくは感想を書いてるBlog。

1970年代からの漫画雑誌・コミックスの数の変化と、販売額の変化から見えてくるもの




 漫画雑誌やコミックスの数がここどれだけ増えたのか、という話に金額の話を合わせることで見えてくる絶望的な何か。
 あと、今って月に20万ページ近く漫画が発表されてるんじゃね?という試算が出ました。




 数値は「出版月報」2009年11月号の特集「いまコミック産業に何が起きているか」に掲載されていたデータおよびsoorceが調査したものより。


簡単なまとめ


 漫画雑誌の数は、増えてる。1年に出版されるコミックスの点数も、増えてる。
 


 



 しかし、雑誌の販売総額は減っている。コミックスの販売総額も減っている。
 


 


 結果、1雑誌あたり・コミックス1点あたりの販売金額はさらに下がってる。このままだと・・・。
 


 


 ということです。



 以下、各論。


漫画雑誌の銘柄数


 ここ45年の漫画雑誌の数の増加傾向をグラフにしてみるとこうなります。


 



 数値はこう。
 1970年の時点で60誌に満たなかった漫画雑誌の数は、1977年に100、1990年に200、1999年には300誌を超えているのです。

漫画雑誌銘柄数(1965年〜2008年)

月刊週刊
児童大衆児童大衆合計
19659105226
19668135228
19679215338
19688336350
19698387356
197063810357
19715439461
19724489465
19733549470
19749448465
197512548478
197615668493
1977187484104
1978258084117
1979348684132
1980358974135
1981379175140
1982399675147
19834210365156
19844411665171
19854311865172
19864612367182
19874512767185
19884612947186
19894413848194
19904414748203
19914515348210
19925718548254
19936119348266
19946819648276
19956620349282
19966520749285
19976521149289
19986421849295
19996522749305
20006622949308
200163231410308
200266223410303
200365230410309
20046324649322
20056824349324
20066724149321
20076724849328
20086625349332


 ただし、1991年以前とそれ以降では集計方法が異なり、1991年以前は年間の平均発行点数、1992年以降は年内で一号でも刊行があった銘柄を回数に関係なくカウントしている、ということで実際はこの緑線で断絶があります。


 



 ここでの「児童」「大衆」は雑誌コードが基準なので、ヤング誌なんかは「大衆」に入っています。
 また、隔週の雑誌もすべて月刊として扱われてるみたいです。


 週刊誌の点数は2001年〜2003年、バンチが創刊されて、アクションが隔週になる前、という期間が最大ってことですね(ヤンサンの休刊・コミックガンボの創廃刊はこの後。なので現在は週刊漫画雑誌は12誌)



漫画雑誌販売金額の推移

 さて、じゃあ実際販売金額はどんなもんか、というとこうなります。
 総計はこんな感じ。現在は1980年代半ばと同じ程度まで下ってきています。


 



 これを種類別にするとこう。
 なんと、1997年以降、週刊少年漫画雑誌の売上げ総計よりも月刊大衆漫画雑誌の売上げ総計のほうが多いのです。


 



 具体的なデータは以下のとおり。

漫画雑誌販売金額(億/年)

月刊週刊
児童大衆児童大衆合計
月刊児童月刊大衆週刊児童週刊 大衆合計
19784332166021351386
19794542446481141460
19805013187151291663
19814843046571911636
19825123256451941676
19835593715661911687
19845484237082061885
19855595227402332054
19865485567223722198
19875596247314642378
19885547077254902476
19895557487746272704
19905578258186882888
19915448839177203064
19925489559676883158
199356096210046943220
199459194410576863278
199565493710987093398
199663893010557493372
19976139899817333316
199857810079756753235
19995769619496163102
20005509318815532915
20015159178565742862
20024969068175472766
20034908767615042631
20044788857134732549
20054378636754462421
20064008116254412277
20073677756224402204
20083337456214222121



 ところが、1雑誌あたりの金額に直してみると・・・こんなグラフ。
 ということで、冒頭のこれは平均。


 



 種類別ではこうなります。
 



 下のほう良く見えませんね。拡大。
 



 発行回数が4倍とかそういうレベルとまったく違う差がついているわけです。


 全体としての売上げは下がっているのに銘柄数が増え続けた結果、こうなったということでしょうか。
 底辺が広いピラミッドほど全高は高くなる、ということかもしれませんが・・・。


 そして、各雑誌の定価は(ページ数が増えるのと同時ではあるけど)上がり続けているのです。
 参考までに週刊少年ジャンプの場合。


 


 つまり、販売金額が同じなら部数は下がっている、ということになります。


コミックスの点数と販売金額


 (こちらは1978年から)コミックスの一年あたりの点数もデータとして載ってまして、グラフにするとこんなふう。


 


 1978年の1年分の新刊は1800冊ちょっと。
 2008年には12000冊ですから、現在では2ヶ月以下で同等の冊数が発売される、ということです。


コミックス発刊点数(1978年〜2008年)


新刊点数販売金額(億円)
19781854455
19791804525
19802001598
19812263640
19822323763
19832601930
198431221080
198532751206
198634961230
198737481405
198839441527
198942681693
199046212002
199145702075
199246532191
199351572410
199457942520
199567212507
199674062535
199769192421
199875962473
199979242302
200078252372
200189702480
200298292482
2003100142549
2004104312498
2005107382602
2006109652533
2007113682495
2008120482372


 この30年間の総計は188248冊、十八万八千二百四十八冊となります。
 もちろんこれ以前にもコミックスは出版されていますが、コダマコミックスから1977年分までの総計でも1万冊は行ってないんじゃあないかな。
 多めに見積もって、二十万冊ってとこですか。*1


 つまり、これまでに出版されたコミックスを総計すると、1日に50冊読んでも読破に11年ほどかかります。
 そして現在、さらに年1万冊超のペースで増えていってます。

コミックスの点数、補足


 2008年の年間のコミックス点数は12048冊。月に1000冊を超えています。
 ただ、これは文庫版、廉価版なども含んだ数値で、実際には


コミックスコミック文庫廉価軽装版
9576829643

 とのことなので、豪華版やら完全版を除くと月に750〜800冊程度、ってことでいいんでしょうか。

 を見るとやっぱりそんなもんなので、大きく間違っては居ないだろう。
 単行本化されない漫画というのもかなりあるので(パチスロ漫画誌なんかどうなんだろうなあ)、それなりに傾向はあってる・・・と思う。


コミックスの販売金額


 上の表からグラフ化したものがこちら。
 


 1点あたりにするとこう。
 



 ただし、この「1点あたり」というのは殆ど参考にならない値かもしれません。
 何せ最大は初版300万部、それに対して最小は・・・返本考えない刷り部数で7〜800くらいからですかねー。
 その上、価格も400円程度〜2000円超えまで様々ですし、最多価格帯が最大販売数帯でもないでしょうし。




漫画のページ数を考える


 ここで、ちょっとヨタ話。
 漫画誌とコミックスのページ数つまり、漫画がどれだけの量描かれているのか、ということについて注目してみます。


 以前の調査で、週刊少年漫画雑誌では1978年から2008年まででページ数が1.5〜1.6倍程度に増えているということがわかっています。
 そこから「1年間に雑誌媒体で発表される」漫画のページ数を概算すると、こんな感じに増えていると考えられます。
 また、コミックスの平均ページ数を200ページとした時の合計ページ数も示します。


 


 計算式としては、

(少年週刊雑誌の数×サンデーのページ数×0.8)×48+(大人向け週刊雑誌の数×サンデーのページ数×0.6)×48+(月刊雑誌の数×12×サンデーのページ数×1.2)

 という、アバウトな値。
 1冊が1000ページを超えるガンガンやアフタヌーンから、300ページ程度しかない中綴じ月刊誌まで、そのページ数を正しく出すのは難しいのですが、サンデーの1.2倍くらいが平均かなーと。
 まあ、隔週も月刊に入ってるしこんなもんだと思う、多分。


1年間に雑誌掲載・コミックスとして発売される漫画のページ数


年間雑誌総ページ数年間単行本総ページ数
1978580320370800
1979679526.4360800
1980755020.8400200
1981748992452600
1982782457.6464600
1983817516.8520200
1984910656624400
1985915552655000
1986974304699200
19871035532.8749600
19881138579.2788800
19891286054.4853600
19901291372.8924200
19911332902.4914000
19921593945.6930600
19931665139.21031400
19941690982.41158800
199518002881344200
199618617281481200
199719742401383800
199820131201519200
199920779201584800
20002088038.41565000
20012113190.41794000
20022080646.41965800
20032119699.22002800
20042246428.82086200
20052210822.42147600
200621912962193000
200723754242273600
200824030722409600


 こうしてみると、2008年には年240万ページ、ってことは1ヶ月に20万ページという試算結果ですね。



 単純に12で割って、一ヶ月あたりこれだけ。
 
 



 プロの漫画家さんって何人居るんだろう・・・。全部で20万ページを平均40ページで描いてるとして、5000人?
 そりゃ、中には月数百ページを描く人も居るけどそんなのはごく少数だし、4コマ誌もあるし、デビュー、引退と出入あるからもっと人数は多いだろうな。
 7000人くらいは居るんだろうか。毎月コンスタントに描く人ばかりでもないし、1万人くらいですかね。
 1万2千人は居ないと思う(感覚的に)。


 東京都の職員さんはもちろん、これ全部余さず読んで、中身を客観的に判断するんでしょうなあ。
 何人体制か知らないけど大変ですなあ。



漫画と漫画雑誌のあしたはどっちだ。

 漫画雑誌が、ページ数が、単行本の数が増え続けた現在、もはや全体を把握することなど誰にも不可能だといって良いでしょう。
 状況から言えば、漫画雑誌の数も、印刷・出版という形態もこれ以上の拡大は多分無い・・・いや、これ以降は縮小の一途を辿る可能性が高い。
 漫画雑誌の数は今後、淘汰が進むか、WEBへの移転が進むか、とにかく減少して行くと私は考えています。
 ですが、膨大な作品が過去に存在し、これからも描かれていくと思われます。


 誰か一人が、いやさ図書館だって簡単に収蔵できるレベルの量じゃあありません。
 ここまで多くなったもの*2は、「オタクだったら〜くらい読んでおかないと」とか「〜くらい常識だよねー」とか「マンガの知識だけではその時期はおそらく誰にも負けなかった。」なんて言葉の通用する量じゃあありません。


 一作品の部数に関しては、多いものと少ないものの両極化というか、ピラミッド化、とも違うな。
 漏斗を逆さに立てたような分布に現在でもなっていると思うのですが、それがさらに格差を広げていくのは確かだと思います。
 採算分岐点に達しない、とみなされる作品はどうなるのか。単行本点数は減っていくのかなあ。それとも、さらに薄利多売を進めるんだろうか。


 長期連載作品、つまり、ある程度の評価を得た漫画はますます長くなるのかもしれない。
 逆に読切漫画の復権があるかもしれない。なぜなら、iPadKindleによって、面白い1作品があっという間に広がるようになるかもれないから。


 未来はまだ混沌としています。
 これからも漫画雑誌で面白い作品が読めるといいとは思うのですが、現在は「残照」とでもいうべき時期に来ているのかもしれません。


 自分にとって面白い作品をこれからも読みたい、と考えたときに自分に出来る事は何なのか。
 改めてそこから考えてみる必要があるのかもしれません。


 自分が好きな作品を薦めるところから、かな。
 世界に羽ばたけ轟先生! 2 (アフタヌーンKC) 涙 星 ―アース―1 (芳文社コミックス) 惑星のさみだれ 8 (ヤングキングコミックス) マップス 愛蔵版 1 (Flex Comix)



 といったところで今回はここまで。



*1:京都国際マンガミュージアムの蔵書数「30万冊」は雑誌も含んだ数値

*2:大きくなった、の時期は既に過ぎている。

今日読んだ本

  1. 週刊漫画ゴラク
  2. 週刊漫画TIMES
  3. 週刊コミックバンチ
  4. 隔週ヤングガンガン
  • ゴラク
    • このシリーズ終了。今時マグロ漁船ってどうなんだろう。様式美ではある。でも、このハッピーエンドは微妙に納得いかねーなー。>ミナミの帝王@天王寺大×郷力也
    • 微妙にE島Iと名前を変えてるのだが、これはこれで同名のAV女優がいるんじゃあないのか、とも。>TOKYO女神‘S@赤羽シュン×早川ナオヤ
    • 言うにしても、場所とタイミングの問題があるだろ。指摘も、破門も。>ばくめし!@土山しげる
    • 手の中で崩れていくイメージ映像は面白い。って、過去編行っちゃうの?>天牌@来賀友志×嶺岸信明
  • 週漫
    • 最終回。掲載が飛び飛びだったこともあって、なんだかスッキリしないまま終わっちゃったなあ、という感じ。途中のギャグ回とかなんだったんだろう>七日同棲@坂部周一。
    • 連続掲載スタート。これも不良の更生話の一種だけど、自分の今まで居たのと違う場所、田舎から都会に出るのってこういうしがらみを立ち切るという意味では有効なんだよねー>釣り船御前丸@江口賢一。
    • 宗教系のタブー持ってる人が安全のためにベジタリアンレストランに入るんならわかるけど、逆は・・・。まあ、裁量効く店ならいいけど、普通のチェーンじゃ無理筋すぎるだろ。>バリスタ@花形怜×むろなが供未。
    • これは従来の立原作品には無かった斬新さ。死んでると思ったら、にしてもここまで強引なのは珍しい>涙星アースチンピラ子守歌@立原あゆみ
  • バンチ
    • 見栄ったって・・・なあ。その歳で再婚をすぐ決められる奥さんが凄いわ。>裁判長! ここは懲役4年でどうすか@北尾トロ×松橋犬輔
    • 前後編の後篇。この行列シーンとか何時描いたんだろう。後編は2案用意してあったとかなんでしょうか>北斗無双を創った男たち@広末有行。
    • 蜂人間・・・シルエットがメルエムっぽいから蟻にしなかったのかねー、とか>ミキストリII-太陽の死神-@巻来功士
    • 最終回。文庫化されてたの知らなかった、って日本の出版社だと普通には無い・・・いや、あるのかなー。ありえないなら新潮社の編集さんが止めるだろうから、新潮社ならやりかねないって位の話かも。月旅行の実現する日は来るんでしょうか>旅人-TABI-TO-@片桐正博×中野ハジメ
  • ヤンガン