ただし「ページ単価」に直した場合は、ですが。
最近の週刊少年漫画雑誌の値段、240円〜250円くらいですか。
昔は漫画雑誌がもっと安かった、最近は値上がりしてる、そういう言説をあちらこちらで見かける*1んですが、これはちょっと誤解があるんじゃないかな、と。
週刊少年漫画誌の価格ってのは、ページ単価(価格/総ページ数)に直すと0.5円前後で推移して、1970年代中盤から殆ど上がっていないんですね。
他の物価上昇と相対的に比較すれば値下がりしてると言って良いくらいなわけです。(参考:ページが見つかりません|PFIインフォメーション)。
なぜそのような事になってるのかといえば、定価の上昇に応じて作品数と総ページ数が増加し続けているからです。
例えば週刊少年ジャンプに関して言えば、思い出の週刊少年ジャンプさんで連載作品数と作品が分かるのですが、連載・掲載作品数は一貫して増え続けているんですよ。(これで定価とページ数が書かれていれば、と他人頼み)
具体的な数字はどうなのよ、というと、過去に紹介したものや手元にあった雑誌では下の表のようになっています。
もちろんこれは、その年度のある特定の号を抽出しただけですから、実際にはページ数*2も定価*3も完全に一定しているわけではありませんが、大体の傾向としてはお分かりいただけるんじゃないでしょうか。
年度 | 雑誌名 | 定価 | 総ページ数 | ページ単価 |
1969 | 週刊少年マガジン | 80 | 282 | 0.284 |
1969 | 週刊少年サンデー | 70 | 274 | 0.255 |
1972 | 週刊少年マガジン | 100 | 318 | 0.314 |
1976 | 週刊少年マガジン | 150 | 300 | 0.500 |
1977 | 週刊少年チャンピオン | 150 | 300 | 0.500 |
1978 | 週刊少年チャンピオン | 170 | 364 | 0.467 |
1979 | 週刊少年マガジン | 170 | 364 | 0.467 |
1979 | 週刊少年サンデー | 150 | 316 | 0.475 |
1983 | 週刊少年マガジン | 180 | 348 | 0.517 |
1984 | 週刊少年サンデー | 180 | 340 | 0.529 |
1986 | 週刊少年サンデー | 180 | 340 | 0.529 |
1986 | 週刊少年サンデー | 180 | 356 | 0.506 |
1986 | 週刊少年マガジン | 180 | 344 | 0.523 |
1988 | 週刊少年チャンピオン | 180 | 380 | 0.474 |
1992 | 週刊少年ジャンプ | 190 | 422 | 0.450 |
1994 | 週刊少年マガジン | 210 | 432 | 0.486 |
2005 | 週刊少年マガジン | 240 | 480 | 0.500 |
2007 | 週刊少年ジャンプ | 240 | 474 | 0.506 |
グラフにするとこんな感じです。
オイルショック時点の大幅な値上げ*4以降は、ページ数(作品数)の増加と定価の上昇が平行して行われていったことにより、ページ単価は殆ど変動していないんですね。
実際にかかる経費*5は上がり続けているのですから、雑誌は単行本の宣伝という役割が大きくなり、「損して得取れ」と言った様な部分も有るのではないかと考えられます。
ただし、この値段を上げる代わりにページ数を増やす方式は、ある時点で破綻をきたすと考えられます。
それは、現在漫画雑誌販売における主戦場たる駅売店とコンビニエンスストア、これらの面展示棚に置ける厚さを超えた時点、または、手に持って読むことのできる重さの限界を超えた時点でしょうか。
それが来るのと、デジタル化によって雑誌が消えるのとどちらが速いか、という競争かもしれません。
※当ブログの関連記事
過去記事一覧を[古雑誌]で検索:http://d.hatena.ne.jp/./soorce/archive?word=%2a%5b%b8%c5%bb%a8%bb%ef%5d
または
1976年と2005年の週刊少年マガジンを比べてみよう その1 1976年側データ編 - 情報中毒者、あるいは活字中毒者、もしくは物語中毒者の弁明
1976年の週刊少年マガジンと2005年の週刊少年マガジンを比べてみよう その2 2005年側基礎データ編 - 情報中毒者、あるいは活字中毒者、もしくは物語中毒者の弁明
1983年の週刊少年マガジン その1 1983年基礎データ編 - 情報中毒者、あるいは活字中毒者、もしくは物語中毒者の弁明
今から20年前の週刊少年サンデーはこんな感じ その1 黄金時代編 - 情報中毒者、あるいは活字中毒者、もしくは物語中毒者の弁明
今から20年前の週刊少年マガジンはこんな感じ その1 基本データと次号予告 - 情報中毒者、あるいは活字中毒者、もしくは物語中毒者の弁明
少年誌発行部数1位だった頃のチャンピオンはこんな感じ その1 基礎データと記事ページ - 情報中毒者、あるいは活字中毒者、もしくは物語中毒者の弁明
など。
#ちなみに、単行本に関して言えばページ数は殆ど変化せずに価格だけ上昇していますので、また別の話となります。それに関してはいつかまた。