情報中毒者、あるいは活字中毒者、もしくは物語中毒者の弁明

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漫画、あるいは小説、もしくはエッセイなどの
印象、あるいは連想、もしくは感想を書いてるBlog。

装丁や挿画は失われるものです、残念ながら。


 id:N31さまへ勝手にお返事。


(http://d.hatena.ne.jp/soorce/20060122#p1をうけての、http://d.hatena.ne.jp/N31/20060123#1138021836 より)
>新装版になることで旧版のイラストが失われてしまっているのだろうか。
>何の比較もされないままなくなってしまって行ってるのだとしたら、すごく悲しいことだなあ。


 とのことですが、残念ながらこれは仕方の無いことで、装丁も挿画も残る場合の方が少ないのです。
 イラストを描いている人の画集として纏める機会でも無い限り、版が変われば失われてしまうものです。


 歌は世につれ世は歌につれ・・・じゃないですが、映画化や復刊など、新装版を出す機会に売ろうと思うとそのままでは売れないし、店頭で目立たないわけですからね。(装丁を変えない場合は帯を付ける、とかが限界ですし)


 ハードカバーから文庫に変わる、新書版から文庫に変わる、出版社を変えて出しなおされる、長期中断を経て改めて出しなおされる、絶版中のものが復刊される、映画化される、ドラマ化される、漫画化される、大抵の場合に旧版での装丁・挿画は無くなり、新版のみが残されます。


 特に旧版を*1そのままで復刊する、という特別な場合で無い限り、その時の新規読者に売るために執られるのが「新装版」なわけですから。


 例えば、もともと挿絵の無い非Aの世界@A・E・ヴァン・ヴォクトも、(ある年齢層以上ならきっと馴染みの在る)金子三蔵の抽象画が表紙のはもう発行されておらず、これが現行品なわけで。*2

 旧版と新版
 非Aの世界 旧版表紙 ISBN:448860904X:image


 また、例えば、デューン@フランク・ハーバートの初期三部作は、石森章太郎が表紙・口絵・挿画を担当していましたが、これらの絵はデヴィッド・リンチの映画「デューン/砂の惑星」公開時新装版になった時にに失われ、(多分)石ノ森章太郎萬画全集にも収録されはしないでしょう。

 デューン 砂の惑星 旧版表紙 デューン 砂の惑星 旧版口絵
 デューン 砂の惑星 旧版挿絵A デューン 砂の惑星 旧版挿絵B デューン 砂の惑星 旧版挿絵C


 ひょっとすると、これは原画がどこにあるかすらもう分からないのかもしれませんけどね。


 ただ、幸運な例外というのもあって、例えばE・R・バローズの「モンスター13号」*3
モンスター13号 表紙

 ISBN:4-488-60142-1:detail
 に収録された時に表紙と口絵を含めて、旧版に存在した武部本一郎の全ての絵が再録されています。


 ただしこの場合、挿絵は残っていても本文の方が随分と旧版から変わってしまっていて、旧字体だった「短劒バラン」が「短剣」になってたり、「土人」が「原住民」になってたり。


 結局、あくまでも旧版そのままのものを読もうとすると、本棚の奥から引っ張り出すか、古書店で買うか、となってしまうのです。
 ただし、それは懐古趣味でしかないのかもしれませんけどね。



#でも、その存在を後から知った人からすると、見てみたい、読んでみたいと思うのは当然の心理な訳で。完璧な解決方法というのはあまり無いようですね。



*1:定価やバーコードやISBNコード以外は

*2:旧版は1966年初版定価160円、新版は1982年初版、現在の定価777円。だけどこの装丁になったのはもっと後だったはず

*3:ハヤカワ版の「モンスター・マン」の方が原題通りだけど、色々在る「〜13号」というフレーズの出典はこれなはずだ