3月8日に、阿部共実の初単行本「空が灰色だから」の1巻が発売されます。
昨年、短期集中連載を経て連載化。週刊少年チャンピオンで連載中。
めでたい。
さて、この作品は所謂「ショートオムニバス」な作品で毎週楽しみに読んでいるのですが、他の一人オムニバス作品にも面白いの多いよね、というような話。
「一人オムニバス」の定義とか
まず、「一人オムニバス」って言葉は私が勝手に言ってる言葉。
飲み会なんかで話してるときに、適当なくくりとしてまとめる為・アンソロジーとの区別をしたい時に造語的にこういう言い方をしてるだけ。
なので結構曖昧で、自分が考えているのだとおおむねこんな感じ。
例外になるのが多いので、絞るのが難しい。
- 連載作品である
- 色んな所に散発的に描かれた作品を纏めたもの(短編集)ではない
- 全体タイトルがある
- 読切連作や、後になって便宜的にくくられたのではない
- 基本的に1話完結
- シリーズ内シリーズや、前後編などの例外もある
- 主人公は不定
- 全体を通しての狂言回しポジションはアリかナシか判断が分かれる
- 大雑把なジャンル・テーマは一応ある
- これも例外アリかも
例えば、ジャンプで昔やってた光原伸「アウターゾーン」の場合、ミザリーが狂言回しとして居るものの、オムニバス作品と言っていいかと思います。
しかし、手塚治虫「ブラック・ジャック」の場合は一話完結型ですが、主人公が固定されている為オムニバスとは言わない。
石黒正数「外天楼」は一話づつが独立しているかのようで実は繋がってる、という形式だったので、ミスリーディング。
そんな感じ。
一人オムニバスのどこがいいのか
キャラクター主体の長編・ギャグ作品とは別の面白さで
- 作者の幅、というか持ってる色んなのを見せてくれる
- 雑誌で単話で読んで面白い
- 単行本でまとめて読むにも飽きが来ない
というあたりがいい点だと思います。
雑誌で読む場合、一話完結形式だと、今週は・今号はどんなことやってくれるんだろうかってワクワクがあるんですね。
缶入りドロップから次にどんな味のが出てくるのかわからないように、ガチャガチャで次に何を引くかってように。
作者側はすげー大変だと思いますが。
ジャンルとしては様々
漫画では、小話、落語、短編小説やショートショートからの流れのものと、大人漫画の流れ、また、それとは別のものが混在しているかも。
岡崎二郎「アフター0」などは短編小説のやSFショートショートの流れですね。
東海林さだお「漫画文学全集」などはオムニバスショートと言って間違いないと思うのですが、大人漫画の流れ。
イタバシマサヒロ×玉越博幸「BOYS BE…」はオムニバス恋愛漫画ですが、ハーレクインロマンスなんかが近いと思ってます。
あと、ギャグの場合はそういう作りでも一人オムニバスって言い方しないかも。
地獄のミサワ「カッコカワイイ宣言!」なんかは、上の定義を満たしてると思うけど、そうは呼ばないと思います。
そして、ジャンル縛りとかシチュエーション縛り的な一人オムニバス作品が現在最も多く掲載されているのはBLか成年漫画雑誌なのかもしれません。
いや、作者がジャンルって場合もあるからちょっと違うかな。
チャンピオンにおける一人オムニバス作品
チャンピオンでの一人オムニバス作品は、ホラー・オカルト系が多いのではないでしょうか。
そもそも、創刊時から連載されていた
がそうですからね。
また、途中から主人公固定に変わりましたが
- 高橋葉介「学校怪談」
も外せません。
昨年連載されていた、うえやま洋介犬「イマワノキワ」もそうですね。
私がオススメする一人オムニバス作品
どこから読んでも、どれから読んでも楽しめること間違いなし。
ビッグコミック系で連載してました。星新一の正当な後継と言える路線。
シリーズ内シリーズとして「大いなる眠り子」があります。
- 竹本泉「よみきりもの」「よみきりものの」
読切連作のようで読切連作でない、といった所か。
どの話をよんでも、「ああ、竹本泉だ」という感想になっちゃうんですが、磐石。
- 上野顕太郎「夜は千の眼を持つ」
コミックビームで連載中。
毎回、今度はいったいどんなことをやってくれるのか、想像もつかないのです。
ジャンルとしてはギャグなのか実験漫画なのか、回によって違うかも。
戦場を舞台にしたオムニバス短編たちは、講談や、戦前・戦中の少年雑誌や貸本の戦記ものからの流れにあるのかも。
どの作品も戦争賛美ではなく、しかし、男のロマンが詰まっています。
女のロマンも。
- 島本和彦「ワンダービット」
一応の主人公は居るものの、出てこない話も多いし、性別すら一定していません。
作品によって絵柄もかなり変えてました。
熱血だけじゃあないんだぜ。
これは短編連作かオムニバスか微妙だけど、掲載時にひとくくりだったんで一人オムニバスでいいと思う。
今は「もやしもん」と「純潔のマリア」でいっぱいだろうけど、たまには短編やって欲しいですね。
- 高橋葉介「ヨウスケの奇妙な世界」
どこまでをこのシリーズと呼ぶかですが、朝日ソノラマサンコミックスの4冊(マンガ少年掲載分)以外は後付じゃあないかと思っています。
「ミルクがねじを回す時」「キツネが原」とか、今読んでみると、なるほど萌えだ、とか。
- 手塚治虫「 」
別格。選びきれない。手塚治虫はそういうの多過ぎて、しかもそのなかでの波がかなり激しいんだよなあ。
「ライオンブックス」「タイガーブックス」「ザ・クレーター」
子供向けから大人向けまで千差万別。
こういう作品こそ、ネット・携帯配信に向いてるんじゃあないかなあ、とも思うのですがどうでしょう。
これもオススメだぜ!ってのがありましたら、是非教えて下さい。
といった所で今回はここまで