先日、古書店でこんな本を買いました。
「日本勇者物語」と「世界勇者物語」(アルス、1928年 昭和三年)
それぞれ左から、表紙・総扉・奥付。
「日本児童文庫」のうち37・38巻にあたる二冊で、日本の勇者、世界の勇者が紹介されてるのです。
現在は「勇者」という言葉が持つイメージの主流って、やっぱり「魔王と闘う唯一の人間」みたくなっちゃってんじゃあないかと思うんですよね。
現在の定義がどうかってのは、ライトノベルなどを研究してる人たちが詳しいだろうし、的確かつ完璧な定義をしてくれると思うので、それは置いといて。
そもそも、国語辞典などで調べると勇者って、
勇気のある人。いさましい人。勇士。
で、魔王とか全然関係ないんだよなあ。
これはやはり、ゲームというかドラゴンクエストシリーズから拡散され続けてきたイメージなんでしょうね。
とはいえ、ドラクエもIではラスボスは「りゅうおう」、IIは「はかいしん」で、IIIからやっと「まおう」「だいまおう」なんだよな。
日本で出版された書籍の中で「勇者」とタイトルなどで引っ掛かるのを見てみると
国会図書館収蔵資料の中で昭和三年よりも古いのは、
なんてのがあって、あとは海外の宗教説話っぽいのが混じった
あたり。初期のこれらは、「勇士」でもよさげなのが多いんですよね。
同年代のをタイトル「勇士」で検索してみると、件数も圧倒的に多い。
というか、「爆弾三勇士」などの例を見るに、逆に何故「勇者」にしたのかがわからない。
ちなみに、アルスの「日本勇者物語」「世界勇者物語」に掲載された人物は下記のとおり。
日本は、まんま講談ですな。
- 坂田公時(さかたの きんとき)
- 鎌倉權五郎(かまくら ごんごろう)
- 畠山重忠(はたけやま しげただ)
- 河野通有(かうの みちあり)
- 妻鹿孫三郎(めが まごさぶろう)
- 梅澤彦四郎(うめざは ひこしろう)
- 鬼小島彌太郎(おにこじま やたろう)
- 千秋季忠(ちあき すゑたゞ)
- 横瀬勘九郎(よこせ かんくろう)
- 黒田長政(くろだ ながまさ)
- 後藤又兵衛(ごとう またべえ)
- 本多平八郎(ほんだ へいはちろう)
- 荒川荒五郎(あらかは あらごろう)
- 斑鳩平次(いかるが へいじ)
- 伊達政宗(だて まさむね)
- 塙團右衛門(ぼん だんえもん)
- 眞田幸村(さなだ ゆきむら)
- 眞田大助(さなだ だいすけ)
- 石川八左衛門(いしかは はちざえもん)
- 宮本武蔵(みやもと むさし)
- 正木大膳(まさき だいぜん)
- 荒木又右衛門(あらき またえもん)
- 關根彌二郎(せきね やじろう)
- 眞木五郎(まき ごろう)
で、世界の方は何故こんな人選なのかよくわからない。
キリスト教関連のが多めではあるけど、神話のペルセウス、ネルソン提督、探検家のナンセンとか、何故?
日本側で宮本武蔵が居るなら、並列の最強人物、ブルース・リーを入れても、って時代が違うか。
カッコ内は、文中でこの国の人、とされている国名。
- ペルセウス(ギリシア)
- ギデオン(イスラエル)
- アリマカス修士(ローマ*1 )
- 聖ジェヌヴィエーヴ(フランス)
- アルフレッド大王(イギリス)
- ロバート・ブルース王(スコットランド)
- ウィルヘルム・テル(スイス)
- ジャンヌ・ダルク(フランス)
- カルロ・ボロメオ(イタリア)
- ラファエット(フランス)*2
- ネルソン(イギリス)
- グラント(アメリカ)
- ナンセン(ノルウェー)
敢えて「勇士」ではなく「勇者」と表記されたことに意味があるような、ないような。
これらを出版した「アルス」というのが「ロトの紋章」での主人公の名前として採用されているというのがまた何か関連があるような、ないような。
結果から逆に勇者とされてる、偉人伝的なような。
やっぱり、現代の感覚からするとなんかピンときませんねえ。
戦後、1945〜1980年位まででタイトルに「勇者」を含むの見てみると、今度は武士や侍、というか講談系のが全くなくなってきてて、それもまたなんでかなーとか。
勇者って一体、なんなんでしょうね。(放棄)
といった所で今回はここまで。