情報中毒者、あるいは活字中毒者、もしくは物語中毒者の弁明

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漫画、あるいは小説、もしくはエッセイなどの
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手塚治虫が『ガロ』と長井勝一を語る(Comic Box 1982年10月号インタビュー)



 Comic Box1982年10月号、「特集 長井勝一『ガロ』編集長」に掲載された、手塚治虫のインタビューというか、勝手語り的なもの。
 後に、Comic Box1996年5月号にも再録されてるんで、そちらで読んだ人も多いかも。


 



 本来のテーマである筈の『ガロ』とあんまり関係ない内容の方が多いというのはどうなんでしょ。
 火の鳥を描かせてくれる雑誌が無いので、コミケで売ろうかな…」みたいなことまで言ってるし。



 
 


 


 家内制手工業的な良さが『ガロ』の永続性になっている


 手塚治虫インタビュー




 『ガロ』の創刊が'64年、そしてそれに刺激されてか『COM』が'67年に創刊された。
 そして未だにまんがファンの間では『COM』派『ガロ』派という区分けと対立(?)がある。
 その『COM』の発行人であり、自ら「火の鳥」を連載、後輩の育成に力を尽くした手塚治虫氏に、出版人、編集者として『ガロ』長井勝一氏と自らを比較してもらった。


 『COM』派『ガロ』派ってのを実際体験された世代の方は今何歳になるんだ・・・。
 1970年に18歳としても、還暦近くですか。



■『ガロ』という本


 劇画が元にあるのだけれど、それにプラス'70年代の怨念が入ってて個性ふんぷんたる出版が出来るということは非常にうらやましい存在だったですね。
 そこまで強烈に個性を出していて果して続くのだろうかと思いましたが、それが現在まで続いている、今、それを手本にしようにも手本に出来ない位絶対的な存在だったですね。

■『COM』派というものはない


 もともと『COM』はこどもまんがの延長線上で出自が『鉄腕アトムクラブ』なのでおのずと性格が決まってきますね。『COM』出身の作家はいましても、じゃあ、彼らが皆同じような個性化というと違うでしょう。
 ところが『ガロ』は長井さんのめざしていた雑誌の個性にみなわりと忠実に従っていたでしょう。最近は違うみたいだけれど。そういう意味では『ガロ』即長井という式は成立するわけですね。
 『COM』というのは虫プロに関係してた人達とかぼくの友達といった雑居家族的なものでしたから、それは必然的に雑居家族的な新人を育てたわけですから、性格は違うわけです。そういう意味で『COM』派というものは存在しないですね。


 これは漫画家視点というか、憧れられて、追われる立場の手塚治虫だからこその言葉じゃないかと思うんですが。
 とはいえ、『COM』『ぐら・こん』出身、というのはCOM (雑誌) - Wikipediaなどを参考にして頂けるとお分かりいただけるように、幅が広いしつかみ様が無いってのは確かかも。


■『COM』をずっと続けていこうとおもわれてましたか


 勿論、それはありました。
 だけど『ガロ』と違うところは売り上げ部数に関係なしといった超然的な態度がとれなかったところですね。『COM』は虫プロ商事の柱だったので、それがダメになった時、ぼくの意思じゃなくて営業の方が勝手に『COMコミックス』という風に変えてしまった時にぼく自身嫌気がさしてきましたね。
 ぼく自身、まんがに対するメッセージを送ろうとはおもってましたが、『ガロ』程の永続性は望みませんでしたね。


 この辺については、アニメーションがらみの方とかからも色々証言があったり、「れお」の方の赤字が原因とか言う証言も聞いたことがあります。


■『ガロ』の「カムイ伝」、『COM』の「火の鳥


 いや、はっきりいってしまえば「火の鳥」はその前の「火の鳥」のリメイクだったわけだけど、「カムイ伝」は前の「忍者武芸帳」と大分性格が違うしそういう意味では始めからオリジナルなものだったわけです。
 水木さん*1にしても滝田ゆうさんにしても二番煎じじゃないものを描いていましたね。


 現在でも単行本が出版され続けている、という視点で見ると、カムイ伝カムイ伝 (1) (小学館文庫)寺島町奇譚 寺島町奇譚 (ちくま文庫)鬼太郎夜話 鬼太郎夜話 (ちくま文庫 (み4-16))など。


長井勝一氏に感じているイメージ


 ぼくは長井さんの奇行(?)を知っているという程のつきあいはしていないですが、一言で言えば『COM』のライバルですね。
 『ガロ』があって『COM』が出たわけですから。ライバルであり尊敬すべき人です。

■「火の鳥」の今後の展開


 実はあちこちの雑誌に売り込んではいるんだけれど、みんな絶対につぶれると思っておじけづいているんですよ(○*2 )。場合によっちゃあ、ほとんどコミケットみたいなところで売るような本に描くかもしれないよ(○*3 )。


 これは、どこまで本気だったんだろう。
 結果としては、1986年に角川書店の小説誌「野生時代」で「太陽編」火の鳥 10・太陽編が連載されるまでこの後4年ほどかかってます。

■流れに身をまかせる


 この間長井さんにあったら、今はもう先のことがよく分からない、流れに身をまかすといったような感じがあるみたいでしたね

■イメイジその2 執念


 ぼくの長井さんに対して持っているイメイジとしては丁度、今田智の友だちでもある福音館*4の社長松井直氏とダブるんですね。彼が執念でああいう立派な絵本を出し続けてそれが結果的に時代を変えたわけです。そういう人生と長井さんのそれとすごく似ているようにおもいますね。長井さん自身、あきらめが悪いというより、まったくあきらめない人ですね。非常にねちっこい。
 ひとつのものにこだわったら、とことん何十年かかってもこだわってるというタイプですね。ぼくがまだ新人の頃はそういう編集人はいっぱいいましたけど。今はいないですね。希少価値です。

■家内制手工業


 奥さんといいコンビですね。その辺が『ガロ』が長く続いてる原因だとおもうし、手作りの味ですね。手作りの味というのは、家内制手工業です。奥さんと一緒にコツコツと作りあげていく。『COM』はもう『COMコミックス』になってオートメーションになってその味がまったくなくなり人間味を失いましたね。そういう手作りのまんが雑誌というのが『ガロ』を除いてなくなりましたね。一時、『リリカ』がそういう方向性をもったのでしたが――。


 『リリカ』はサンリオが1976年〜1979年にかけて出版していた少女漫画雑誌。
 手塚治虫は「ユニコ」ユニコ(1) (手塚治虫漫画全集 (285))を連載していた。
 立原あゆみも執筆してました。


■もう一度、出版を


 ぼくは考えたいですよ。十年一昔というけど、十年毎に出版情勢が変わると昨日も話しあってたんだけど、たとえば三十年前、『サンデー』『マガジン』等の大版の視覚に訴える本が出、二十年前に『ガロ』『COM』が創刊、十年前に少女漫画ブーム、そして『ガロ』派の人たちの後退、そう考えてみると今年が丁度転機なんだな。そういう意味ではもう一度出版をやりたいですね。


 この「少女漫画ブーム」は二十四年組や「ベルサイユのばら」を指しているのかな。
 出版者としての手塚治虫は、編集者では無いんでこの辺はちょっとなんとも。


■八十年代


 もしやるとすれば当然『ガロ』とは違う、なんというか“メッセージ”と“インフォメーション”がほどよくミックスされた本を創りたいですね。出版人として三十年前に『漫画少年』、そして二十年前の『COM』、もう一冊なんとかしたいなあ。昔を懐かしむものじゃなくてね。八十年代とでもいうのかなあ。やっぱり創ってみなくちゃ判らない。


 実際、80年代前半は青年誌創刊ブームで、ヤングマガジンなどの創刊時には手塚治虫も執筆しています。
 虫プロダクションが出した雑誌てのは『COM』『ファニー』『れお』などがあり、そのどれもが先進的な目標(後輩育成、女性向け漫画雑誌、個人メイン漫画雑誌とか)を打ち立てていたんですが、手がけていたのが漫画だけじゃあなかったこともあってなくなっちゃったり、とその辺は色んな本に書いてあることなんですが、どうもよくわからない。
 それは手塚治虫がやりたかったこと、なのかなあ、とか。


 日本動画興亡史 小説手塚学校 日本動画興亡史 小説手塚学校 1 ~テレビアニメ誕生~
 なんかを読んでみると、そっちはメインではなかったようにも思えるし。



 といったところで今回はここまで。



*1:水木しげる

*2:記号BA-90

*3:記号BA-90

*4:絵本など、子供向け書籍を中心に出している出版社

読んだ本(2011/03/17発売分)

 

  1. 週刊少年チャンピオン
  2. 週刊モーニング
  3. 週刊ヤングジャンプ
  • チャンピオン
    • 過去話キタ。が、重いぞ。ガンダムはどっかで関わってくるのかしら>弱虫ペダル@渡辺航
    • なんかの丸焼きとかそういうのじゃあなさそうだが・・・>範馬刃牙@板垣恵介
    • あー、確かに酒のつまみも色んな種類を少しづつだといいんだよな>てんむす@稲山覚也
    • ノリ軽いにも程があるだろ・・・。>ケルベロス@フクイタクミ
    • 魚屋は今後入荷とかどうなるんだろうなあ。三陸産は当分の間絶望的だろうし>行徳魚屋浪漫 スーパーバイトJ@沼田純
    • 短期集中新連載。名前もネット系、twitterのID付きで実際にネタ連動してるっぽいけど、今はちょっとタイミング悪いかなー>バイトなう@神楽つな
    • 読切。死神とか幽霊とか多いよなあ。学校怪談@高橋葉介の「父帰る」も連想>寂滅屋@木下惠司。
  • ヤンジャン
  • モーニング
    • 月・・・。「星を継ぐもの」か?>BILLY BAT@浦沢直樹(プロット原案製作:長崎尚志)
    • 家に押しかけるってのはありそうだ。特に当時だと抑制効かなそうな>僕はビートルズ@藤井哲夫×かわぐちかいじ
    • テンポいいね。TV見ながらのトーク閻魔大王と地獄の官吏が、って状況が可笑しい。で、住所は「地獄」なんだ。>鬼灯の冷徹@江口夏実
    • 棋譜書くのは結構な訓練が必要っぽいですが、ネット将棋とかだと勝手に記録してくれるのかな?自分は読むのも出来ないけど>ひらけ駒!@南Q太
    • 落語ネタも。「元犬」か。色々な呼び方(中入り前、寄せ場など)が当時の雰囲気出しますね>ふらり。@谷口ジロー。ー
    • 新人読切。一所に居つけない人、って確かに居る。自由人というべきか、フーテンというべきか。モーニングはこういうのチャレンジャブルだよなあ・・・。>SUNNY SUNNY ANN!@山本美希
    • 最終回。本屋だらけの街(神保町)があるならば、カフェだらけの街があっても良いのかも。多分問屋の一人勝ち。おつかれさまでした>なごみさん@宮本福助