感動した、というと少し違うな。
深く重く静かな、表面ではなく体の芯に、腹を殴られたのに背骨まで響くような衝撃をうけた。
本書にはアメリカの女子刑務所に収監された2名の受刑者それぞれを主人公とした中篇「アイヴァ」「トニ」が収められている。
もともとは表題にもなっている章「優しく歌って、高らかに歌って」だけが短編として書かれたそうだが、数にして19頁しかないこの章の凄烈なこと。
作者自身の経験と他の受刑者の経験談が混じっているフィクションだそうだが、強さ弱さというものについて考えさせられる。
外で置かれていた立場、ヒモと娼婦、刑務所の中での看守と囚人の力関係、置き換え語を使う意味、などなど。
国境破りで捕まったメキシコの女性がアメリカの刑務所について語る言葉に衝撃を受ける。
この場所はあなたにはいやなところ。外では、あなた、暮らしよかったでしょう。
わたしにはちがう。暮らし、ここのほうがいい。食べるものの心配もない。
清潔な場所で眠れて、そんなにたくさん働かなくていい。他の女たちもそう。
トニ。あなたとわたし、ちがう世界に生まれたの。
わたしたち同じところに来て、あなたには、ここいやなところ、わたしには、ここいいところ。
でもそれは同じ場所。
(同書P151より。)*1
学校も、街も、インターネットも、はてなも、2chも、「それは同じ場所」なのだよなあ。
*1:本来は改行なしで1つの鉤括弧内